新春特別公開@東京国立博物館 本館
正月三が日が過ぎ、改めて平日に東京国立博物館の新春特別公開を含め常設展を回りました。
全て書き出しておきたいものだらけだったのですが、厳選して紹介します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。
本館 2室 国宝室
《◉ 松林図屏風 6曲1双 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀》
霧がみえる。すごい。圧倒されます。
しっとりとした霧の中に浮かぶように見える松林。近づいて見ると驚くほどに荒々しい筆遣いで松が描かれています。遠景としてぼんやり山が描かれていますが、こんなにもけぶると本当なら山なんて見えないはず。稜線が見えるのは近いところに光があるからなのでしょう。のぼせ上がって写真撮るのを忘れました。
本館 3室 仏教の美術―平安~室町
《◎ 紺紙金字法華経 巻第四 1巻 平清盛、平頼盛筆 加賀前田家伝来 平安時代・承安元年(1171)書写奥書》
撮影禁止なので、隣の《紺紙金字無量義経》の写真を撮りました。このように、紺紙に金字でお経が書かれています。平清盛が最初の十数行を書いて、残りを異母弟の頼盛が書いたようで、途中で筆跡が変わります。
《紺紙金字無量義経(平基親願経) 1巻 平安時代・治承2年(1178)》
本館 3室 宮廷の美術―平安~室町
《◉ 扇面法華経冊子 1帖 平安時代・12世紀》
扇型の紙面に装飾を施し、法華経を書写して中央で綴じた冊子本。文字の下には経典の内容とは無関係な貴族や庶民の営みが描かれている。
写真は赤くなってしまいましたが、実物は金色です。
《扇面雑画帖 1帖 室町時代・15~16世紀》
合計12面の扇面画。主題は物語絵、花鳥、風景とさまざま。
本館 3室 禅と水墨画―鎌倉~室町
《山水図屏風 6曲1双 「秀峰」印 室町時代・16世紀》
一息ついて、この屏風の前のソファで長々と眺めました。こう大きいと山頂から山々を見渡しているような気になって、実に爽快です。説明に「瀟湘八景のうち七景が見出せる」とありましたが、月がないのかな。
本館 4室 茶の美術
《建水 1口 仁清 江戸時代・17世紀》
野々村仁清は色絵とともにろくろの技に定評がある。この作品はそのろくろの技を遺憾なく発揮した秀作。内面に白釉をかけている。
本館 7室 屏風と襖絵―安土桃山~江戸
《雪景山水図(旧 帰雲院障壁画) 4面 円山応挙筆 江戸時代・天明7年(1787)》
応挙54歳、絶頂期の作で、もと京都。帰雲院(南禅寺塔頭)の障壁画の一部。仙人たちが雲に乗り、雪山の間を浮遊している。金の背景に描き残すことで雪と雲を描いている。
《◎ 西湖春景・銭塘観潮図屏風 6曲1双 池大雅筆 江戸時代・18世紀》
右隻が西湖春景図、左隻が銭塘観潮図。西湖は中国浙江省杭州にある湖。古来名勝の地として知られている。銭塘観潮は、同じく浙江省の銭塘江で旧暦8月18日に河を遡ってくる満潮を見物すること。
これ面白かった。離れてみると細やかなグラデーションでぬめりのあるような風景画だが、近づいてよく見るとボツボツと点描で描かれていて、墨の色も様々。ひょうきんな筆使いでした。
本館 8室 書画の展開―安土桃山~江戸
《富士山図 1幅 英一蝶筆 江戸時代・18世紀》
東海道の難所のひとつ薩陀(さった)峠の山道から、旅人たちが駿河湾越しに富士山を望む。紅葉と印だけが赤。とても柔らかく優雅な絵です。
この日の8室は平日の静けさを取り戻して、静かでした。
《花鳥図屏風 6曲1双 佚山黙隠筆 江戸時代・宝暦14年(1764)》
曹洞宗の禅僧で書家の佚山黙隠は清人の沈南蘋が日本に伝えた濃厚な花鳥画を習得。モチーフの種類や形態がよく似ているため、伊藤若冲との関連が注目されている。
《竹図 1幅 池大雅筆 江戸時代・18世紀》
上で取り上げた屏風と違って、伸びやかな筆遣い。竹のしなり、つけたてで描かれた笹の葉が美しい。節の点々がひょうきんです。池大雅はもっと見たいなあ。
《雪中棕櫚図 1幅 秦意冲筆 江戸時代・19世紀》
やたら黒々とした棕櫚の葉といかにも重そうな雪。このぬめり感は若冲に似ていると思ったら、それもそのはず弟子とのこと。
《新三十六歌仙図帖 1帖 狩野探幽筆 江戸時代・寛文4年(1664)》
後鳥羽院が選んだ鎌倉時代の歌人三十六人の絵姿と和歌を描いたもので、嫁入り道具として調製させた豪華な画帖。
本館 10室 浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)
《雪中鴛鴦 1枚 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀》
降りしきる雪の中、夫婦和合の象徴である二組のオシドリの番と、それを眺める男女。
《万歳図 1幅 宮川長春筆 江戸時代・18世紀》
新年を祝って烏帽子姿で扇を持って舞う太夫と、太夫について鼓をうつ才蔵。
《羽根付図 1幅 礒田湖龍斎筆 江戸時代・18世紀》
《小松引図 1幅 歌川豊広筆 江戸時代・18~19世紀》
小松引とは、松の若木を、正月最初の子の日に引き抜いて庭に植えて長寿を願う遊びのこと。奈良・平安時代まであった正月風俗。
本館 12室 漆工
《◉ 舟橋蒔絵硯箱 1合 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀》
琳派の祖、本阿弥光悦の代表作。高く盛り上げた蓋には波と小舟が描かれ、舟の上に幅広い鉛の板を掛けている。その上から、後撰和歌集、源等(みなもとのひとし)の歌「東路の佐野の舟橋かけてのみ思い渡るを知る人ぞなき」から「舟橋」の字を省略したのを銀の板で散らし書きしている。
本館 14室 掛袱紗―祝う心を模様にたくす
掛袱紗(かけふくさ)は、祝い事で贈り物をする際に、お祝いの品の上に掛ける覆いのこと。年始の挨拶や節供、中元や歳暮、婚礼や長寿のお祝いなど、日本の伝統的な行事や祝い事に合わせてあつらえられたという。
《若松鶴蒔絵広蓋 1面 江戸時代・18世紀》
《袱紗 紺繻子地貝桶模様 1枚 江戸時代・19世紀》
広蓋はもともと衣服などを贈る際に長持などの蓋にのせて渡したことに由来する。その後、その覆いとして掛袱紗の習慣が生まれた。この広蓋には、黒漆の地に若松と吉祥文様の鶴が蒔絵で描かれている。袱紗は紺の繻子地に金糸の刺繍で夫婦円満を願う貝桶模様。貝殻の内面にそれぞれ凝った絵が描かれている。
本館 15室 臨時全国宝物取調局の活動―明治中期の文化財調査―
《◉ 紅白芙蓉図 李迪筆 中国 南宋時代・慶元3年(1197)》
李迪は南宋に活躍した画院画家。南宋院体花鳥画の最優品。
《鑑査状(紅白芙蓉図) 1枚 明治26年(1893)3月17日》
紅白芙蓉図に対して臨時全国宝物取調局から発行された監査状。
明治21年(1888)から22年にかけて近畿地方で実施された宝物調査に同行した写真家、小川一真による調査写真。
《◎ 猿猴群遊図屏風 1枚 小川一真撮影 明治21~22年(1888~89)》
記録写真が重要文化財になるというのもなんだか不思議。元絵不在だったりするんでしょうか?
今回も消耗しきってトーハクを後にしました。
家に帰るためのエネルギー補給で、スタバでチョコラティ バナナココのホイップましまし。
ドリンク受け取り口の横に、おめでたいチョークアートがありました。
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