日本美術の流れ@東京国立博物館 本館

秋晴れのよい天気が続きます。ジョギングのついでに東博へ。
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まずは庭園でのんびり休憩しました。
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日差しも随分とやわらいで、日向ぼっこが気持ち良い季節になりました。

以下、気になったものをメモとして残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

 本館 7室  屏風と襖絵―安土桃山~江戸

《◎波涛図 5幅 円山応挙筆 江戸時代・天明8年(1788)》
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荒れ狂う波を描いた紙本着色の5幅。もとは、応挙の故郷、京都府亀山市にある金剛寺の本堂前面の三室32襖に描かれていた。応挙が生涯をとおして同一テーマで描いた作品としては最大のもので、三室を分割する襖を外したり開いたたりした場合でも絵がうまく繋がるようになっている。「戊申晩夏写 應擧」の落款と「應擧之印」がある。

秋冬山水図屏風 6曲1双 円山応挙筆 江戸時代・18世紀
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右隻に秋景、左隻に冬景が描かれた屏風。背景に薄く金泥が厳かな雰囲気をもたらしています。

枯木花鳥図屏風 6曲1双 山卜良次筆 江戸時代・17世紀
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山卜良次(さんぼくよしつぐ)は、江戸時代中期の京都狩野派の画家で狩野山楽の門人。狩野山卜とも言う。狩野派は多くの門人に支えられて集団制作を行なった。牡丹は大覚寺の山楽の襖絵、左隻の幹に止まる山鳥は、山楽・山雪の天球院襖絵と共通する。

本館 8室  書画の展開―安土桃山~江戸

布袋図 1幅 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀
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大袋をつけた杖を肩に担ぎ、大きな腹をせり出して立つ布袋。
見ているだけで笑顔になる、よいお顔です。

《馬図 1幅 岸駒筆、皆川淇園賛 江戸時代・寛政8年(1796)》
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鹿毛の馬と、その背にブラシをかける唐人を描いたもの。馬の胸と腰の大きさと、耳の小ささが印象に残る。
岸駒(がんく)は江戸時代中期から後期に活躍した画家で岸派の祖。沈南蘋派、円山派などを学び、筆法の鋭い装飾的な障屛画を描いた。
賛を書いた皆川淇園(みながわきえん)は、江戸時代中期の儒学者。

猪図 1幅 岸連山筆 江戸時代・19世紀
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藪から飛び出してきた猪を描いたもの。
岸派は虎の画が良いが、猪も上手い。 
岸連山は、幕末の岸派の画家。岸駒、岸良に師事して婿養子となり、第三代岸派を継承して、有栖川宮家に仕えた。

潘妃図 1幅 源琦筆 江戸時代・18世紀
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潘妃は、中国5世紀末の南斉の皇帝東昏侯の妃。奢侈好みの皇帝は、黄金製の蓮華を敷き詰めた道を妃に歩かせ「歩々蓮華を生ず」といって眺めたという。源琦は江戸後期の円山派の画家。応挙の高弟として長沢芦雪と併称される。花鳥画、美人画を得意とした。

四季花鳥図巻 巻下 1巻 酒井抱一筆 江戸時代・文化15年(1818)
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四季の花や鳥を描いた絵巻で、下巻は秋と冬の部分。巻末に「文化戊寅晩春 抱一暉真写之」の署名と「雨華」「文詮」の印がある。
定かでないものが多くありますが、萩に鈴虫と松虫、月と小禽、朝顔と仙翁花と綿、木槿と鶏頭と犬蓼と葡萄、小禽と水引草、菊に蟷螂と芙蓉、紅葉に赤啄木鳥と嫁菜、女郎花に蟻と石膠と藪蔓小豆、青木に蝉の抜け殻と樅の幼木、初雪の降る柏に黄鶲と紅葉した蔦、積雪の薄と山帰来、雪梅に鶯と藁囲いの水仙。全てが色鮮やかに描かれています。
例えでなく、どの画面を撮っても絵になる、とても美しい絵巻です。

本館 10室  浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)

紫式部図 1幅 宮川長春筆 江戸時代・18世紀
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紫式部が源氏物語を書いたとされる琵琶湖のほとりの石山寺で、月を眺めながら「源氏物語」を執筆したという伝承を絵画化したもの。水に映った月が描かれている。石山の秋月は近江八景にも選定される。
宮川長春は、尾張生れの江戸中期の画家で宮川派の祖。肉筆画専門の絵師で、生涯版画には手を染めなかった。土佐・狩野派を学び、菱川流をも慕い懐月堂の影響を受けた。美人画を得意とした。

《袴着の祝 1枚 奥村政信筆 江戸時代・18世紀》
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幸福・俸禄・長寿の三徳を備えた福禄寿が、幼子で袴着姿の大黒天を肩に担ぎ、後ろから弁天様が大根柄の傘を差している。それぞれの着物も宝尽くしや鶴丸や瓢箪など吉祥文様が描かれている。
袴着の祝は子供の成長を祝い、初めて袴を着せる儀式。平安以降、男女の別なく三歳から七歳の間に吉日を選んで行われたが、江戸時代には五歳男児のみの風となり、次第に11月15日に定着して七五三の風習の一環となった。

笛を吹く若衆 1枚 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀
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紅葉、野菊のある檜垣の前で横笛を吹く若衆を描いたもの。髻が太く刀を差しているが、雪持文の振袖を着ている上に表情も女性的である。

楽屋内三代目沢村宗十郎 1枚 勝川春章筆 江戸時代・18世紀
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楽屋でくつろぐ役者を描いた揃物の一枚。三代目沢村宗十郎が衣装を脱いだ浴衣姿で、女形役者山下万菊と話しをしている。一般人には普段見ることのできない裏の姿が面白く、春章は同じ趣向で絵本も描いている。衣装箱や鬘箱が中を覗くように描かれている。
勝川春章は、歌舞伎役者や力士を写実的な作風で描いた浮世絵師で、門下には春好、春英、春潮、葛飾北斎ら人気絵師が出て活躍し、勝川派は浮世絵界で大きな勢力を誇った。

《◎中島和田右衛門のぼうだら長左衛門と中村此蔵の船宿かな川やの権 1枚 東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794)
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東洲斎写楽は、寛永6年(1794)5月から翌年1月までのわずか10ヶ月(途中閏年がある)に140点を超える作品を残して忽然と姿を消した。その正体は、阿波藩の能役者、斎藤十郎兵衛が定説になりつつある。
東京国立博物館には、寛政6年5月江戸三座の夏興行に取材した第1期の役者大首絵28種のうち27種が所蔵され一括して重要文化財に指定されている。
本図は桐座の演目「敵討乗合話」の中で中島和田右衛門が演じた「ぼうだらの長左衛門」と中村此蔵が演じた「船宿かな川やの権」を描いた作品。中島和田右衛門の紋は「細輪に二階笠」、中村家の家紋「中車」である。チョイ役でしかもそれほど有名でない役者を描いている。

三代目大谷鬼次の川島治部五郎 1枚 東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794)
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寛政6年7月、河原崎座上演の「二本松陸奥生長」に登場する敵役、川島治部五郎を一人立ち全身像で描いたもの。富田介太夫を殺した直後、父を探しに来た兵太郎の差し出した手堤灯の明かりを頬被りした手拭いで遮り、左手でぐっと柄頭を握る姿が、緊迫した雰囲気を出している。

紀伊国屋納子 三代目沢村宗十郎の孔雀三郎 1枚 東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794)
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惟仁親王方の孔雀三郎の防戦を大首絵で描いたもの。右上短冊の俳名が「納子」となっているが正確には「訥子」。定紋は丸にいの字。
林家正蔵師匠によく似ています。

《◯三代目市川高麗蔵の南瀬六郎 1枚 東洲斎写楽筆 江戸時代・寛政6年(1794)
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写楽の第二期にあたる寛政6年8月桐座で上演された『心霊矢口渡』で、六部に身をやつした南瀬六郎が主君の遺児を守りながら旅しているところ、土地の悪者に襲われ錫杖に仕込んだ刀を抜いて身構える場面。左側に六郎を襲う馬方が配されるように構図されている。
市川高麗蔵の定紋は三升の中に髙の字。
役者舞臺之姿繪・あかしや 1枚 歌川豊国筆 江戸時代・18世紀
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「役者舞臺之姿繪」は、細判中心の時期に、大判に一人立ちで舞台上の役者を似顔全身図で描いた揃物。豊国が役者似顔絵の第一人者になった出世シリーズ。本図は「あかしや」の屋号、二代目大谷友右衛門が「仮名手本忠臣蔵」に登場する斧定九郎を演じている。

役者舞臺之姿繪・やまとや 1枚 歌川豊国筆 江戸時代・18世紀
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歌川豊国は、歌川豊春の弟子。はじめ師に倣った人物画を描いたが、美人画では鳥居清長、喜多川歌麿の、役者絵では勝川派の画風を取り入れて、庶民に人気の様式で描いた。以後も時々の好みに合わせてさまざまなスタイルを確立し好評を博した。
大和屋の定紋は丸に三つ扇。

《五代目市川団十郎の景清 1枚 歌川国貞(三代豊国)筆 江戸時代・文久3年(1863)》
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歌川国貞は、初代歌川豊国の弟子。のち3代豊国(自称2代)を襲名した。美人画、役者絵の両分野で活躍し、作品には江戸の美意識である「粋」が表現されている。合巻など版元挿絵から錦絵、春画まで作画範囲は広く、浮世絵界最大の作画量を誇った人気絵師。

名所江戸百景・よし原日本堤 1枚 歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)
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名所江戸百景は、浮世絵師の歌川広重が安政3年(1856年)2月から同5年(1858年)10月にかけて制作した名所絵揃物。広重最晩年の作品であり、その死の直前まで制作が続けられた代表作であるが、最終的には完成せず、二代広重の補筆が加わって「一立斎広重 一世一代 江戸百景」として刊行された。
日本堤は、日本堤は浅草聖天町から下谷三之輪まで続く長大な堤防で、夜の歓楽地・新吉原の通い道であったために、吉原堤とも呼ばれていた。月が晧々と光る夕暮れの空には雁が連なり、よしず張りの茶屋が並ぶ日本堤は、これから吉原へ行く人で賑わっている。遠くに見える町並みが吉原で、その入口に見返り柳が描かれている。

《名所江戸百景・浅草田甫酉の町詣 1枚 歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)》
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浅草田甫には吉原で働く女性の控屋があった。雁が渡る夕暮れの富士と、縁起物の熊手を担いで鷲大明神社参詣の行列を、格子窓越しに猫が覗いている情景が描かれている。室内の畳の上には遊女のかんざしと手紙、雀柄の腰紙がある出窓には唐草模様の茶碗と矢羽根模様の手拭が置かれている。屏風裏の模様は鳥襷。鳥と首輪のない猫の組み合わせに、自由のない遊女の身の上を重ねている。

《名所江戸百景・蓑輪金杉三河しま 1枚 歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)》
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秋の日の湿地帯の夜明けの風景。空から舞い降りる丹頂鶴。沼に立つもう一羽の視線は天秤棒で餌を運ぶ人に向けられている。遠くに点々と集落がみえる。
江戸時代の三河島(現在の三ノ輪)は荒川の氾濫が頻発する湿地帯で、毎年11月には竹の囲いをめぐらし、鶴の餌付けが行われていた。将軍が自ら鷹を使って鶴を捕獲し、朝廷に献上する「鶴御成」の猟場の一つだったという。

《江戸名所百人美女・花川戸 1枚 歌川国貞(三代豊国)筆 江戸時代・安政4年(1857)》
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江戸名所百人美女は、歌川国貞が江戸の百名所を背景に百人の美女を描いた揃物。
鏡台の前で身なりを整える女。駒絵には花川戸の振売が描かれている。花川戸は現在東京都台東区に位置し、地名は花の名所である向島への戸口であることによる。
歌川国貞(三代目豊国)は江戸時代後期の浮世絵師で、歌川豊国の門人。正式には三世豊国とされるが、みずからは二世を称した。猪首猫背の独特な美人画を描く。作画期が長い上、工房を安定させて大量の作品を出版したことから、作品の数は浮世絵師の中で最も多い。

《役者乗合い舟 3枚 歌川豊国筆 江戸時代・19世紀》
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大判錦絵三枚続で、大勢の役者が舟遊びをする様子を描いたもの。
役者と違い、右下で舟縁を顔を伏せて歩く男がやけに写実的に描かれているのが面白い。

《江戸芝居三階之圖 3枚 歌川豊国筆 江戸時代・18世紀末~19世紀初》
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大判錦絵三枚続で楽屋裏を描いたもの。姿見や舞台衣装のある部屋で、大あたりの振舞いを食べる者、煙草を吹かす者、着替える者、セリフを覚える者など様々な姿が描かれている。

《相州江の島巌屋の図 3枚 喜多川月麿筆 江戸時代・19世紀》
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大判錦絵三枚続で江ノ島の岩屋に集った人々を描いたもの。中央で扇子を持つ男のお祝い事に集ったのか、その前にはお尾頭つきの鯛などの豪華な料理が並べられている。左に釣りをする者がいれば、右には海女が海から捕れたての鮑を運んでいる。左奥からも続々と人が集まって来ている。右には洞窟の出口がある。今も昔も変わらないようで、食べ物を狙って海鳥が飛んできている。
喜多川月麿は江戸時代後期の浮世絵師。喜多川歌麿の門人で美人画や花鳥画を得意とした。

 

本館一階の特別4室では日本文化との出会い きもの体験ワークショップが開かれていました。
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外国からの観光客に人気のあるイベントです。振り袖を着て、本館のあの立派な階段を背景に写真撮影している人も。きっと、よい思い出になりますね。