クリムト展@東京都美術館

上野公園です。眩しい程の陽気になりました。
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東京文化会館前の通路では東京・春・音楽祭によるストラヴィンスキーとバレエ・リュスの写真展を開催中です。
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足を止める人が少なくありません。

私のお目当ては東京都美術館。
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この春、私的注目度ナンバーワン、クリムト展 ウィーンと日本 1900初日に突入です。

klimt2019.jp

10時過ぎの到着でした。
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音声ガイドを借りる人がいつもより多めな気がしました。

普段から耳栓がわりに着けているウォークマンですが、《ベートーヴェン・フリーズ》を堪能するため、第九を聴きながら回ります。75分あるので尺的にもぴったり。

以下、気になったものについてメモを残します。

クリムトとその家族

《9 ゲオルク・クリムト、グスタフ・クリムト 踊り子 1904年頃 鍛造、銀鍍金、銅板 個人蔵》
彫版師の家系に生まれたグズタフ・クリムト。弟ゲオルクはグスタフと同じ専門学校で学んだ彫金師。掛け軸を思わせるような縦長の画面にグスタフのモチーフが形造られている。

修業時代と劇場装飾

《19 グスタフ・クリムト カールスバート市立劇場の緞帳のための
デザイン 1884/85年 油彩、カンヴァス ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン》
緞帳形の枠に合わせて描かれたデザイン画であるのを額装し、しかも白いケースで覆われて展示されていたので、過剰な縁取り具合が面白かった。

《29 フランツ・マッチュ 女神(ミューズ)とチェスをするレオナルド・
ダ・ヴィンチ 1889年 油彩、カンヴァス 中環美術館(台湾)》
クリムトの画家仲間で、芸術商会を共に設立したフランツ・マッチュの作品。半円型の画面に、写実的に描かれたダ・ヴィンチとやや平面的に描かれた女神。女神はどこに視線を向けているのか定かでない表情。背景に、向かい合って羽根を広げる孔雀のモチーフ、七宝柄。

ウィーンと日本

《49 グスタフ・クリムト 女ともだちI(姉妹たち) 1907年 油彩、カンヴァス クリムト財団、ウィーン》
縦長の画面に二人女。画面の大部分を閉める黒い服に市松模様。

《55 グスタフ・クリムト 17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像 1891年 パステル、厚紙 個人蔵》
日本美を取り入れ始めた最初期の作品。白めの背景に白いレースの服を来た横向きの女性。金色の額装に梅や草花が描かれる。エミーリエ・フレーゲの姉がグスタフの弟エルンストと結婚している。未婚だったが、グスタフが死ぬまで生涯を共にした。

《61 グスタフ・クリムト 赤子(ゆりかご) 1917年 油彩、カンヴァス ワシントン・ナショナル・ギャラリー》

幾重にも重ねられた着物に包まれて寝かされている赤ん坊が描かれている。正方形の画面に赤子の頭を頂点にした三角形の構図。補色が効果的につかわれていて、画面が明るい。日本画からの影響という目で見ると、歌舞伎絵にしか見えなくなってくる。

ウィーン分離派

《62 グスタフ・クリムト ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実) 1899年 油彩、カンヴァス オーストリア演劇博物館、ウィーン》
縦長の画面に、手に鏡を持ち、茶色の髪に花が飾られている他、何もまとわない女がほぼ等身大で描かれている。足元には蛇がからみつき、たんぽぽが綿毛をつけている。画面上部と下部が金色で、上部にはフリードリヒ・シラーの『歓喜に寄す』からの引用文、下部に題名が書かれている。『歓喜に寄す』については、ベートーヴェンの第九と言った方が通りがよいかもしれません。

《63 グスタフ・クリムト ユディト I 1901年 油彩、カンヴァス ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン》
最も人だかりができていた作品。そして、私が最も楽しみにしていたのもこれ。
ユディト記に出てくる美しい未亡人が官能的な表情で描かれているが、よくよく見ると傍らにどす黒い肌の男の首。ユディットの肌は細かな縦線が幾重にも引かれて彩られ、匂い立つように揺らめく。金色の装飾はまばゆいほどに光を放ち、衣装の柄を作る光が肌に映る。「ユディトとホロフェルネス」と書かれた額はグスタフがデザインし、弟のゲオルグが製作した。

《73 グスタフ・クリムト ベートーヴェン・フリーズ(原寸大複製) 1984年(オリジナルは1901‒02年)鉛筆、サンギーヌ、パステル、カゼイン絵具、
金、銀、漆喰、モルタル、その他 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン
第14回分離派展への出品作で34メートルにも及ぶ壁画。ベートーヴェンの《交響曲第9番》をテーマに描かれたもの。幸福への憧れ、黄金の騎士、敵対する勢力としてゴルゴン三姉妹(ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサ)と巨大な怪物テュフォン(山よりも大きく100の蛇の頭を持ち目からは火を吹く)、ポエジーに慰めを見出す憧れ、歓喜・接吻と続く。
この絵を前にして第九を聴く贅沢よ。

《76 ゲルハルト・シュトッカー 分離派会館模型(1902年の第14回ウィーン分離派展[ベートーヴェン展]開催時)2011年 菩提樹材 ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン》

肖像画

《103 グスタフ・クリムト オイゲニア・プリマフェージの肖像 1913/14年 油彩、カンヴァス 豊田市美術館》
色鮮やかな背景にカラフルなドレスを着た女。補色の効果で画面がこの上なく明るいのが印象に残る。レオナールにこういうワンピースがあったような。

生命の円環

《106 グラフィック専門学校・研究所(ウィーン) グスタフ・クリムト《医学》 1904年頃 フォトグラヴュア ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン》

《119 グスタフ・クリムト 女の三世代 1905年 油彩、カンヴァス ローマ国立近代美術館》

正方形の画面を三分割して、中央部分に老婆と若い女とその胸に抱かれる幼い子が描かれている。画面上部に仕切られた黒い部分は銀が酸化したもの。若い女性と子供が安らいだ表情をしているのに対し、老いを悲観的に捉えているのが印象的でした。

《120 グスタフ・クリムト 家族 1909/10年 油彩、カンヴァス ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館、ウィーン》
本展の最後の作品として提示されていた。母親と二人の子供が描かれている。三人とも黒い服をまとい、その青白い肌が際立って見える。眠っているのか死んでいるのか定かでない不穏な雰囲気。

 

一周するのに1時間半かかりました。もう一周して、気になったものを丹念に見て回ったので、滞在が約2時間といったところ(特設ショップ抜き)。
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出口からエスカレーターで1階に降りたところに撮影コーナーが設けられています。
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展示室出てすぐの特設ショップがレジ待ちで混雑していましたが、私的には都美館にエントランス正面にあるミュージアムショップの方にむしろ興奮しました。そちらもクリムト関連グッズが大変充実しています。要チェックですよ。

 

この春最も期待していた展示でした。この後の混雑が予想されるので、スケジュールを押して初日に突入しました。今回、所々で人の山ができましたが、鑑賞に困ることはなく最後まで堪能できました。とはいえ、これくらいがギリギリなのは事実で、週末から怖いなと。特に3章の私生活の辺りは両側の壁に小さな展示物があるせいで通路が狭くなってしまい、無駄に混雑していました。もうちょっと詰まったら大変そう。そこまで記憶に残るものではなかったので、さっさと飛ばすといいですよ(笑