明治有田 超絶の美-万国博覧会の時代@泉屋博古館
今年は宮川香山に始まり、何かと明治工芸が注目を浴びています。工芸はまったくもって勉強不足なので、これだけ集中して展覧会があると、とても為になります。
秋晴れの気持ちの良い日、泉屋博古館 分館(東京)に行きました。「明治有田 超絶の美-万国博覧会の時代」展です。
何でも2016年は、日本磁器誕生、有田焼創業400年記念の年とのこと。400年前、つまり、1616年に朝鮮から連れてこられた陶祖、李参平が有田にて日本初の磁器の焼成に成功したと伝えられているそうです。その後、明治時代になって貿易が自由化されると、細やかな絵付けと精緻な技巧を凝らした有田磁器は国外でも評判になり、1873年(明治6年)開催のウィーン万国博覧会で好評を博した後も、世界各国で開催された博覧会を中心に絶大な人気を誇ったそうです。
泉屋博古館分館は、六本木一丁目のビル街にあります。辺りは交通量もなくとても閑静です。
この展覧会に限り、港区民(在住・在学・在勤)は無料です。
会場内は撮影禁止なので、その場でメモ書きしたレベルでいくつか作品を紹介します。
第1章 万国博覧会と有田
有田《染付蒔絵富士山御所車文大花瓶》 1873年 有田ポーセリンパーク蔵
会場に入ってすぐにあるので、目に勝手に飛び込んできます。とにかく巨大なので圧倒されます。その高さ185センチ。金色に見える部分はなんと蒔絵です。
香蘭社(辻勝蔵)《色絵菊花流水文透台付大花瓶(対)》 1876年頃 個人蔵
ポスターに使われている作品。そうそう、私の中の有田焼ってこんなイメージです。白地に赤と金、アクセントに青色が入ってとにかく豪華。いや、まったく本当に豪華。壺の底に「肥前辻製」という銘と蘭の絵が描かれています。まだ香蘭社のマークが定まっていない時代のため、この対だけでも蘭の描き方が違います
香蘭社(年木庵喜三)《色絵鳥獣文花瓶(対)》 1875年~1879年 個人蔵
獅子面、鶴亀、兎、霊獣、鳳凰、牡丹、口金の内側は六方区画の地紋。丸い獅子面が太陽のようで、見るからに縁起良さげ。
年木庵というのは、幕末明治の時代を生きた稀代の名工、深海平左衛門のこと。「器物は人の思想を写すものなり 名器を作らんとすれば自身の高尚の思想を涵養すべし」という言葉を残しています。息子の墨之助、竹治兄弟は父より英才教育を施され、兄弟で「年木庵喜三」の銘款を引き継ぎ、有田の名門として香蘭社設立に参画しましたが、その後香蘭社から袂を分かち、手塚亀之助らとともに精磁会社を設立したんだそうです。すぐ倒産したみたいだけど。この辺が第二章で紹介されてます。
第二章 「香蘭社」の分離と「精磁会社」の誕生
香蘭社《色絵鳳凰唐草文三足皿》 1879年~1880年 株式会社香蘭社蔵
5弁のねじり菱形の皿で底に瑠璃色の三足という変わった形なので、一見洋食器に見えるが、実は江戸時代の鍋島焼きにみられる形。地に金彩、白抜きで尾長鳥と花唐草文。細部は赤絵と銀彩で描き込む。金地白抜きの花唐草はこの時期の主流となった意匠。
青磁会社《色絵鳳凰花唐草文透彫大香炉》 1879年~1897年 個人蔵
1メートルくらいありそうな大香炉。蓋のつまみは鳳凰。白地に金彩。蓋に菊紋、頚部に桐紋の細やかな透かし彫り。窓絵に鳳凰、花喰鳥、緻密な吉祥文様がこれでもかと細密に描かれています。蓋のつまみや持ち手(象顔)には酸化クロムの薄緑が見える。脚部にも透かし彫り。これぞ超絶の美。
辻勝蔵《色絵笠仔犬置物》 1879年~1880年 個人蔵
網笠にいたずらをする黒白、茶白の二匹の仔犬。子犬にかじられた笠の網目まで表現されています。
青磁会社《色絵鳳凰菊御紋入四足香炉》 1879年~1897年 東京村田コレクション
四足の香炉。透かし彫りのある蓋のつまみに獅子。胴の持ち手は龍頭。白地に金彩で鳳凰、龍が描かれている。菊文(宮家旧蔵品)あり。上品で目を引きました。取っ手の獅子がロングヘアのダックスフントみたい。頭の角は二股に分かれて、後頭部の毛はゆるふわ。片脚で玉を押さえ、斜めに投げ出した脚がかわいらしい。持ち手の龍頭も表情がひょうきん。ここのどれでも一品あげると言われたら、これ持って帰ります。
第三章 華やかな明治有田のデザイン
図案と作品が展示されています。図案の中には、あれ?となる絵もあって、絵画とデザインはまったくの別物なんだなあと思いました。
香蘭社《色絵獅子牡丹大皿》 1875年 個人蔵
金彩で牡丹が描かれています。青と赤の牡丹の柄をよく見ると、騙し絵的に三頭の獅子の姿が浮かび上がってくるという意匠。面白い。
第四章 近代有田の発展
この辺になってくると、現代のセンスと変わらなくなってきます。
香蘭社《染付藤文洋食器》 1910年頃 公益財団法人立花家史料館蔵
立花家の御定紋「祇園守紋」を意匠に盛り込んだデザインの食器セット。白磁の食器の淵に描かれた藤の花の一部に、違和感なく、祇園守紋が溶け込んでいます。なんて雅な世界なんでしょう。
香蘭社《染付杏葉唐草文洋食器》 1925年~1929年 公益財団法人鍋島報效会蔵
ミョウガやユリの根のように見えると思っていたら、杏葉というのは、どうやら馬具らしい。馬の腰部につける金属製の飾りで、馬の埴輪にも現されているくらい古くからあるものだそうです。
こちらに詳しくあります→むなかた電子博物館「小さな古代の馬」
余談ですが、うちにも杏葉紋に似てるのあったようなと思って帰って確認したら、妖怪展で買った、姫国山海録に出てくる津軽の海辺の怪虫のワッペンでした。まったくの別物です(失礼すぎる)。
香蘭社《色絵竹林文壺》1879年~1880年代 有田ポーセリンパーク蔵
蓋のつまみが獅子。前脚を置いた金色の玉が動くらしい。どうやって作ったんでしょうね。壺の胴部に29羽の鳥が舞う竹林が描かれています。竹林文は明治後期の香蘭社を代表する図柄で、藍色の呉須と金彩を主とした色絵で表現しています。
竹林の上、鳥が遊ぶ空間に金粉が施されています。風のイメージでしょう。現代人にはそれが花粉に見えてね、クシャミが出そうになりましたとも。
第四章は、どれもこれも一言書きたくなる作品ばかりだったのですが、限がないので、ここまで。
受付で入場チケットと一緒に、こんなきれいなポストカードも頂きました。左が《紅茶地段替紗綾鉄線藤模様唐織》江戸時代、右がマリー・ローランサン《夫人像》1934年、下がアンリ・ファンタン=ラトゥール《ばら》です。
帰りに南麻布の老舗イタリアン、キャンティ本店でランチ。ここはオムライスが名物なんですが、今日はチキン&小海老のクリームカレーの気分。
関連ランキング:イタリアン | 六本木一丁目駅、麻布十番駅、神谷町駅
おいしかったし、ゆっくりランチができました。
過去に行った、明治工芸に関する展示会は以下のとおり。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません