アジアギャラリー@東京国立博物館 東洋館

8月上旬、東博の東洋館に中国絵画を観に行きました。既に展示は終わっていますが、記事にしておかないと忘れるだけなので投稿します。

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東洋館 8室 中国の絵画 墨の戯れ―文人の愛した植物たち―

風雪に耐え、冬でも青さを保つ松と竹、百花に先駆けて寒中に花を咲かせる梅、山谷で人知れず馥郁たる香りを放つ蘭、これらはいずれも君子の徳を体現する植物として、古くから文人に愛されてきました。文人たちは、書画一致の理想を持ち、自身の高潔な精神の発露を筆墨に託して、これらの植物を描いてきました。絵画を生活の糧とする職業画家とは異なる制作態度を強調するため、その作品はあくまで「墨戯」であると称されました。14世紀から18世紀にかけての文人墨戯作品の魅力を紹介します。 

いつものように、気になったものをメモとして残します。(◎は重要文化財)。

《◎翠竹図軸 1幅 顧安筆 中国 元時代・14世紀 東京・吉祥寺蔵》
顧安は呉(江蘇省)の人で画竹を得意とした。風にしなる竹の優美な姿を描いたもの。

《墨蘭図軸 1幅 伝雪窓普明筆 中国 元時代・14世紀 個人蔵》
松江(上海)の人で、元の禅僧。没骨技法による画蘭を得意とした。

《梅花水仙図軸 1幅 律天如筆 中国 明時代・正統6年(1441)》
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律天如は呉県(江蘇省蘇州)の画僧で、蘭石を得意とした。この画には、梅花と推薦、桂花(木犀)、タンポポが低い視点から描かれている。水仙は春一番に咲く梅花とともに好んで描かれる画題である。

《墨梅図軸 1幅 陳録筆 中国 明時代・正統11年(1446)》

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陳録は会稽(浙江省紹興)の人。右上に「新梢帯月」とあるとおり、みずみずしい梅枝に月がかかる。背後に淡い墨。

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右:《墨竹図軸 1幅 呉宏筆 中国 清時代・17世紀》
呉宏は臨川(江西省)の人。清の順治から康煕年間前半(17世紀後半)の文人。山水と墨竹にすぐれ、南京(金陵)で活躍した八人の優れた文人画家、金陵八家の一人に数えられる。本画は、金陵派特有の光に対する鋭い感覚がみられる呉宏の代表作。桑名鉄城旧蔵品。

中:《五松図軸 1幅 李鱓筆 中国 清時代・18世紀》
李鱓は興化(江蘇省)の人。号は復堂、懊道人。康煕50年(1711)の挙人である。退官後に揚州で活躍した文人画家で「揚州八怪」の一人に数えられる。自由奔放な画風を特色としたが本図のような精緻な画風もよくした。
秦の始皇帝が大山を巡幸した折に雨宿りした五本の松を封じて五大夫とした故事により、五大夫は松の異名となり、君子の徳を象徴する。

左:《松石図軸 1幅 朱倫瀚筆 中国 清時代・18世紀》

朱倫瀚は字を涵斎、亦軒、号を一三といい、歴城(山東省)の人。武官として活躍し、外舅の高其佩に学び、筆の代わりに指で描く指頭画を得意とした。本作も指爪に墨を含ませて描かれたもの。

《◎墨竹図頁(唐絵手鑑「筆耕園」のうち) 1枚 栄陽筆 中国 元~明時代・14~15世紀》
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栄陽と読める白文方印が捺され、狩野安信によって栄陽筆と鑑定された。しかし、栄陽の記録は画史類に残されていない。

《蘭石図軸 1幅 謝時中筆 中国 清時代・17世紀》
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謝時中は福建の出身とされ、道釈人物および山水、花鳥に優れた清代の画家。延宝2年(1674年)に長崎に来日し、日本の文化人とも交流した。水気の多い墨により濃淡のグラデーションの美しさみ見どころ。江戸時代の漢学者、市河米庵の旧蔵品。

《水仙図巻 1巻 陳書筆 中国 清時代・雍正12年(1734)》
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水仙は仙人を意味し群生していることから群仙、竹は音通から祝を意味し、太湖石は寿石ともいい長寿を象徴する。
陳書は清時代前記の女流画家。図末の自識によれば、陳書75歳の作であるという。

《四君子図冊 1帖 蘇廷煜筆 中国 清時代・乾隆52年(1787)》
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蘇廷煜は安徽省蒙城の人で、18世紀に活躍した文人書画家。四君子をよく描き、特に指頭画が評判だったと伝わる。本画においても、大胆な構図と素早い手さばきで、竹・梅・蘭・菊が生きいきと描かれている。

 

東洋館の4階の中国画のコーナーはいつ行っても静か。ここの椅子に座って心静かに画を眺めると贅沢な気分が味わえるので、お気に入りの場所になりました。