ボストン美術館展@東京都美術館
秋も深まり、展覧会が目白押しです。運慶展が盛り上がっているので多少空いているかもと思い、なかなか足を運べなかったボストン美術館展へ行きました。
世界有数の規模と質を誇るボストン美術館のコレクションは、国や政府機関の経済的援助を受けず、ボストン市民、個人コレクターや企業とともに築かれています。本展では、美術館を支えてきた数々のコレクターの物語に光を当てながら、発掘調査隊の成果を含む古代エジプト美術から、歌麿や蕭白らによる日本・中国美術の名品、ボストン市民の愛したモネやファン・ゴッホを含むフランス絵画のほか、現代美術までを選りすぐりの80点でご紹介します。
この後、運慶展を梯子する予定だったので、体力的なことを考えて、観るのは2章と3章だけにとどめました。
以下、気になったものをメモとして残します。
2 中国美術
《徽宗 五色鸚鵡図巻 北宋、1110年代頃 1巻、絹本着色》
徽宗は北宋の第8代皇帝。右に痩金体の書、左に桃の枝に止まった五色インコが描かれています。繊細で緊張感の感じられる書、開きかけの杏の花の可憐な美しさ、羽毛柔らかさと体温が伝わってくるインコ。
2章に入ってすぐに本品がガラスケースに入って展示されていました。私は、これを見に来たのです。行列にジリジリ押されながらの鑑賞だったので、人目を気にせず張り付いてというわけにはいきませでしたが。あまりに良かったので、他は見ずにこのまま帰ってもいいと思った程です。
《馬遠 柳岸遠山図 南宋、12世紀末期 団扇(現在は冊頁装)、1枚、絹本墨画淡彩》
団扇形の画面に柳のある風景。対岸に人家がある。遠景に二つの崖が危うく近接している。橋に向かって進む旅人の姿が極端に小さく描かれている。
《夏珪 風雨舟行図 南宋、淳熙16 –紹熙5年(1189 – 94)頃 団扇(現在は冊頁装)、1枚、絹本墨画淡彩》
団扇形の画面に強風吹きすさぶ風景が描かれている。近景に描かれた草木は、左から吹く風で枝や葉が流されている。水に浮かぶ舟も帆が大きく膨らんでいる。嵐で視界が悪く、遠景に山々がわずかに見える。
《周季常 施財貧者図(五百羅漢図のうち)南宋、淳熙11年(1184)頃 1面、絹本着色》
元は京都大徳寺に伝わった100幅の五百羅漢図のひとつ。5人の羅漢が雲に乗って現れる。一人の羅漢の手から落とされた硬貨を、下界の貧しい者達が、手にしていた物を投げ捨てて、必死にかき集める姿が描かれている。
《周季常 観舍利光図(五百羅漢図のうち)南宋、淳熙5年(1178)頃 1面、絹本着色》
断崖の隙間から荒々しく波打つ海が見える。崖下に佇む五人の羅漢が見上げる視線の先には、気流に乗ってやってきた羽と角を持つ子鬼の姿がある。
《陳容 九龍図巻 南宋、淳祐4年(1244)1巻、紙本墨画淡彩》
約10mの長大な画面に描かれた九匹の龍。沸き立つ雲と荒れ狂う波のなか、あるいは悠然と飛翔し、あるいは佇むさまを粗放な筆墨で描き出している。作者の陳容は南宋末期の画家で、所翁と号した。特に龍図を得意としたことで知られている。本図はかつて清朝の乾隆帝が旧蔵した名品。
3 日本美術
《尾形乾山/尾形光琳 銹絵観瀑図角皿 宝永7年(1710)1枚》
角皿に、光琳が滝見をする日本の高士を描き、幹山が李白の詩「望廬山瀑布」を書いた。
飛流直下三千尺(飛ぶように激しい水が、まっすぐ三千尺も流れ落ち)
疑是銀河落九天(まるで天の川が天から落ちるかのようだ)
乾山省書
光琳畫
《英一蝶 月次風俗図屏風 江戸時代、18世紀前期 6曲1双、紙本着色》
屏風の上下に月次に年中の行事を描いた一双。右隻は上段の右から正月、初午、花見、下段右から灌仏会、端午、納涼となり、左隻は上段の右から盂蘭盆会、中秋名月、観楓、下段の右から夷講、火焚祭、師走が描かれている。
《英一蝶 涅槃図 正徳3年(1713)1幅、紙本着色》
本作は釈迦の入滅の様子を描いた縦3メートル近い大作。涅槃に入る釈迦と悲しみにくれる菩薩、羅漢、動物たちを鮮やかな色彩描いている。動物たちが親子で描かれているのが特徴的。軸木も驚くほど太い。軸の先端には横谷宗珉による獅子が彫られている。
作品の大きさと経年劣化で、ボストン美術館でも25年以上にわたり公開されなかったのを、本展での公開に際し、約170年ぶりに本格的な解体修理をした。
《曾我蕭白 風仙図屏風 宝暦14年/明和元年(1764)頃 6曲1隻、紙本墨画》
画面左に勢いよく渦を巻き、強風を呼び起こす黒雲。風に荒れ狂う波濤、揺れ動く木々のなか、剣を持つ男が橋を挟んで黒雲に対峙する。右には、風に吹き飛ばされた男たち。その後ろには白と黒の兎のつがいが驚いた顔で身を寄せている。大胆さとユーモアを巧みに織り交ぜた、蕭白の代表的作品。
《曾我蕭白 飲中八仙図 明和7年(1770)頃 1幅、紙本墨画》
唐の詩人杜甫の「飲中八仙歌」にちなんだ作品で、古くからよく描かれた画題。中唐初めの8人の酒豪である賀知章、汝陽郡王李璡、李適之、崔宗之、蘇晋、李白、張旭、焦遂が描かれている。
《酒井抱一 花魁図 江戸時代、18世紀 1幅、絹本着色》
艶やかな花魁の歩き姿を描いたもの。髪は高価な簪や櫛で飾り、鬢が横に大きく張り出している。前帯を垂らし、桜柄の赤い小袖の上に黒打掛を着ている。縄に松葉と裏白と二垂の紙垂をつけた飾りが、風に揺れている。
画中に河鍋暁斎が、酒井抱一の師、歌川豊春の筆と極書きしている。
《喜多川歌麿 三味線を弾く美人図 文化元–3年(1804–06)頃 1幅、絹本着色》
髪を高く結い上げ、意匠を凝らした髪飾りをつけた若い芸者が三味線を調弦している。鬢の透けが見事。優美な視線の先には、五人の狂歌師(紺屋安染、三八市成、山吹多丸、根事良白音、通用亭)が彼女へ寄せた狂歌がある。
《司馬江漢 秋景芦雁図 江戸時代、18世紀後期–19世紀初期 1幅、絹本着色》
芦が生え蜻蛉が飛び回る水辺。遠くの空を見上げる雁。 西洋絵画を参考に、水平線を低く遠近法で奥行きを出している。元は冬景芦雁図と対になっていたと思われる。
《与謝蕪村 柳堤渡水・丘辺行楽図屏風 江戸時代、18世紀 6曲1双、紙本墨画淡彩》
右隻には中国の高士と童子たちが船で行楽し、左隻には親しげに身を寄せて丘を歩く姿が描かれている。
南画で中国風に描いたものでありながら、人物の表情はやわらかく、どこか日本的に見えるから面白い。
以上の他にも、古代エジプト美術や、ゴッホ作ルーラン夫妻の肖像画を始めとする西洋画のビッグネームの作品がたくさん展示されていましたが、その辺はさらっと流すにとどめました。
本展のコラボメニューが充実してそうだったので、カフェに寄りたかったのですが、かなりの行列ができていたので断念しました。残念。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません