馬の博物館開館40周年記念所蔵名品展 馬の美術150選@馬の博物館

2022年4月19日

秋晴れの休日、横浜市の桜木町駅からバスに揺られ、馬の博物館に行きました。f:id:Melonpankuma:20170926085353j:plain

なんでも、去年の馬鑑展で公開されるはずだった新作《厩図2016》が、今回本当に完成したということなので、それは行かなくちゃと。

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と、そんな話があったとしても、山口晃氏の作品に関しては、実際に自分の目に映るまでまでは、あまり期待しないようにしています。

 

馬の美術館では、現在、馬の博物館開館40周年記念所蔵名品展 馬の美術150選を開催中です。

馬の博物館は、本年開館40周年を迎えます。長年ご愛顧いただいたお客様に感謝の気持ちを込めて、馬の文化の魅力をお楽しみいただけるよう作品を厳選した、所蔵名品展を開催いたします。
当館は、馬に関する文化の普及と継承を目的として継続的に資料収集を行っており、これまで積み重ねてきた馬に関するコレクションは、幅広い分野に及びます。本展では、これら約1万5千点以上の所蔵品の中から、メモリアルイヤーにふさわしい貴重な美術品150点を精選し、一挙に公開いたします。

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馬の博物館は第1展示室から第4展示室まであります。今回の特別展示は第2、第3展示室で行われました。一部撮影禁止のマークで区別されているところや接写禁止などの注意事項がありましたが、馬の博物館の所蔵品で著作権の切れているものに関しては、大部分がフラッシュ無しでの撮影のみ許可されていました。
記憶がかなり怪しくなってきた鑑賞者(私、私、)にとって、その場で細かなメモを残さずにすむのは疲労の度合いが違います。大変ありがたい。

以下に、気になったものをメモとして残します(◎は重要文化財)。

第2展示室

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ご覧の通り空いています。とても見やすい。

《厩図屏風 桃山時代》
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六曲一隻の紙本金地著色。屏風の一扇をひとつの馬房として、毛並みの異なる6頭の馬を描いている。右から鹿毛(かげ)、青駁毛、青粕毛、白毛、青粕毛、鹿駁毛(かぶちげ)。左の三頭はたてがみを編んで飾られ、右の一頭を除いて寝そべらないように天井から胴縄で吊られている。いずれも馬房で立ち上がったり跳ねたりと動いている。静かな状態の馬を描いたもう一対がある可能性。金雲は下地を胡粉で盛上げてあって豪華。 

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左《螺鈿鞍 室町時代》
右《葡萄銀象嵌鐙 銘 友真作 江戸時代》
鉄製の舌長鐙で踏込に螺鈿が施され、鳩胸から笑にかけて銀をはめ込み葡萄の文様を形成している。江戸時代には装飾性の高い馬具が作られ、贈答品として用いられた。

《天命無地紋馬環付釜 室町時代》
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天命釜は下野国佐野(現在の栃木県佐野市)で制作された茶の湯釜。室町時代に生産が最も盛んになり、九州の芦屋釜と並び称された。岩肌と呼ばれる荒びた肌釜に特色があり、形態は多種多様で芦屋釜に比べて野趣に富む。本作は鐶が馬形という珍しいもの。
この裏の鐶は馬が正面から描かれていて愛嬌があります。

《牛馬蒔絵手箱 江戸時代(17世紀)》
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赤漆に金銀の蒔絵で様々な毛色の牛や馬が描かれている。牛馬ののどかな様子が微笑ましい。箱の側面に幅広の紐があり、蓋を固定できるようになっている。

《一の谷合戦図屏風 江戸時代初期》
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生田の森と一ノ谷の合戦を描いた六曲一双の紙本金地著色の屏風。木曽義仲を倒した後、源範頼、義経らは引き続き兵士追討を命じられ、生田の森では範頼勢が大手、義経勢が搦手の大将として攻撃する。義経は搦手の本陣と分かれ、一ノ谷本陣の後ろにある鵯越に向かい、山上から下り平家の背後を突く。この奇襲により平家は多くの武将が討たれ、再起を絶たれることになった。左隻には、この戦いのエピローグとなった熊谷次郎直実と平敦盛の名場面が描かれている。

《賤ケ岳合戦図屏風 江戸時代》
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賤ヶ岳の戦いは、天正11年(1583年)4月、近江国伊香郡(現在の滋賀県長浜市)の賤ヶ岳付近で起きた羽柴秀吉と柴田勝家の戦いである。この戦いは織田勢力を二分する激しいものとなり、これに勝利した秀吉は亡き織田信長が築き上げた権力と体制を継承し天下人への第一歩がひらかれた。
本品は賤ヶ岳の合戦を描いた六曲一双の紙本著色の屏風である。左隻には勝家軍が秀吉軍を激しく攻め立てる20日の合戦を、右隻には両軍の雌雄を決した翌21日の戦いを描いている。両軍を表した華やかな旗指し物が細やかに描かれている。秀吉の本陣とみなされる場所には千成瓢箪が見られるが、秀吉の姿は削られている。大阪城天守閣に所蔵されている同じ構図の賤ヶ岳合戦図屏風には秀吉の姿が残されているので、本作は江戸中後期に秀吉の姿を削除したと思われる。

《◎張良図沈金鞍 室町時代(15世紀)》
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全体は黒漆塗で、前輪(まえわ)と後輪(しずわ)の外側に沈金によって文様を表している。画題は、漢の高祖(劉邦)の幕僚となった張良と、彼に兵書を授ける黄石公の話である。前輪は黄石公の前にひざまずく張良、後輪は騎乗して立ち去ろうとする黄石公を、沓を持つ張良が追う場面が描かれている。

《馬図 伝 月山(任仁発) 元時代》
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月山(任仁発)は元時代の官吏、画家。松江(上海市)の出身。人物画、花鳥画などを多く手がけ、とりわけ画馬を得意とした。
傷みが大きく単眼鏡がないと見づらいのですが、馬の顔が丁寧に描かれていて、穏やかな表情がよい。

《源氏物語図色紙 蛍 住吉具慶 江戸前期》
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源氏物語第二十五帖。六条院馬場殿での五月五日行事の打鞠楽の場面を描いたもの。
住吉具慶は江戸前期を代表する大和絵師。徳川家綱に仕えた。当時狩野派に独占されていた幕府の絵師に、大和絵の住吉家が初めて進出した。

《横浜名所之内 大日本横浜根岸万国人競馬興行ノ図 永林信実 1872(明治5)年》
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1860年代、横浜で始まった洋式競馬は、慶応2年(1866)に完成した根岸競馬場で行われるようになり、翌年から昭和17年(1942)幕を下ろすまで、76年間競馬が行われた。

《七福神九段馬競 歌川芳虎 明治時代》
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満開の桜の下、七福神が競馬をしている。九段馬競とは招魂社競馬のことで、東京麹町区九段の招魂社(現在の靖国神社)境内にあった競馬場で行われていた。日本人の手による最初の洋式競馬であり、主催は陸軍で招魂社/靖国神社の例大祭に際に行わた。

《小田原城下図屏風 江戸時代初期》
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六曲一隻の紙本著色の屏風。右上に描かれた城は、五層の天守と三層の櫓が立つ江戸城で、二扇には大磯らしく宿場と海に注ぐ酒匂川が配されている。中央には東海道に沿った小田原城と小田原宿の賑わい、左端には箱根の急峻な坂道を馬と人が一歩一歩進む様子が表されている。小田原が京都と拮抗するほどの繁栄を示していたことが「北条記」に記されている。地方の城下を風俗的に描いた屏風では最も早い寛永期頃の作品と考えられる。

《馬図 雲谷等顔/沢庵宗彭賛 江戸時代》
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雲谷等顔は戦国時代末期から江戸時代初期にかけて活動した毛利氏の御用絵師で、幕末まで続く雲谷派の祖。雪舟様式を踏襲しつつも、桃山文化らしい装飾性豊かな作風を確立した。賛を書いた沢庵宗彭は安土桃山時代から江戸時代前期にかけての臨済宗の僧で、大徳寺住持。

《野馬図 与謝蕪村 江戸時代中期》
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手前の緑に繁った木と、その奥の紅葉している木が遠近で交わるように、樹下で芦毛と青毛の二頭が首を嗅ぎあっている。
背中の力は抜けているが、芦毛の後脚の幅は狭く、耳の傾きには張りが感じられ、二頭の親密さの中にある軽い緊張感が伝わってくるよう。

《馬図巻 狩野章信 文化11~文政9年(1814~1826)》
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狩野章信は、江戸時代中期から後期に活躍した狩野派の絵師。狩野派にありながら浮世絵美人画にも学んだ、洒脱で機知に富んだ独特の画風は「素川風」と評された。
無駄のない線が美しい。

《馬尽 駒菖蒲 葛飾北斎 1822(文政5)年》
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北斎の色紙判摺物「馬尽」は全28点からなる。文政5年(1882)午年に因み、馬に関する副題を付け、狂歌と絵でそれぞれの画面を構成している。金銀をふんだんに使った豪華な摺物である。
本品には、扇子と駒菖蒲の煙草入れ、手前に螺鈿の小箱が描かれている。小箱には紙が重ねて入れてあるので、懐紙入れかもしれない。根付には木の枝に止まった赤い鳥が描かれている。菖蒲革は、鹿革などを濃い緑色に染めたものに菖蒲の花の意匠を白地で抜いたもので、菖蒲の読みが勝負・尚武に通じることから、武器武具に多く用いられた。菖蒲柄でなく馬柄のものを、駒菖蒲と呼ぶ。

《馬尽 初午詣 葛飾北斎 1822(文政5)年》
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馬尽の揃物のひとつ。初午詣とは、旧暦2月の最初の午の日に稲荷社に詣でる行事。お供え物の上に梅の花を1輪添える習わしがあった。馬形を手にした狐の面をつけた人形(王子稲荷の紙からくり)、酒を入れる水筒がある。
藁に包んであるのは菜葉でしょうか。ちりめんに包まれた桜の小物入れの中身も気になります。

《鉄道馬車から 山口晃 2015(平成27)年 個人蔵》
鉄道馬車は、日本でも明治時代に実働していた馬が線路の上を走る車を引く鉄道のこと。それに発想を得て、鉄道人力車や鉄道自転車などを白描している。

《白馬の森 東山魁夷》
東山魁夷の白い馬の見える風景のシリーズ。幻想的な青い森の中に一頭の白馬が浮かび上がる。魁夷が愛し続けたモーツァルトのピアノ協奏曲をイメージしたものと言われている。

《騎手 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 1899年》
競馬の瞬間を馬の背面から描いている。騎手の顔は見えないが、その背中から緊張したレースの様子がわかる。空は薄く曇り、遠くに風車が見える。
ロートレックはフランスの画家で、卓越したデッサン力でパリの風俗を描いたことで知られる。自身は馬には乗れなかったが、幼い時から大の競馬ファンだったそう。

《曲屋 (岩手県遠野市より移築)》
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これが本来の展示ですね。去年の馬鑑展では、山口晃氏のインスタレーションで液晶テレビとか電気ポットとかバイクとかポリ容器なんてのが置いてありましたので。

第3展示室

この展示室には山口晃作品が展示されている。入り口に「第3展示室は撮影可能ですが、個々の作品を接写することは禁止します。」と注意事項あり。f:id:Melonpankuma:20170926085414j:plain
中央に待望の《厩図2016》です。本当に完成していました。手前の白いのは、たぶんサービス(笑
この他に、道後百景の展示もありました。ゴールデンウィークに道後温泉で投影されたのを見たのが思い出されます。ここで実物を見られてよかった。

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《真夜中の馬 パブロ・ピカソ セルロイド エングレーヴィック》
「真夜中の馬」は、1956年にイリアズドから出版された詩画集で、ロシュ・グレイの詩にピカソの版画12点をそえたもの。12頭の姿態の異なる馬たちが、無駄のない線で描かれている。

第4展示室

この展示室では、馬の進化から 家畜化に至る流れを追うとともに、馬の生理、生態、利用の歴史などを紹介します。

馬の進化
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日本在来馬等の骨格標本
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骨格標本を見るのが好きなので、こういうのたまりません。草食動物は歯が素敵なんですよ。接写につぐ接写で写真がすごい枚数になりましたが、趣旨が変わるのでここには並べません。

 

この日は休憩室で工作教室が開かれていたので、飲み物を取って休憩することもままならず、疲れを押して展示を回る羽目になりました。しかも、前回よりさらに展示が充実していましたしね。これで入場料が200円って、見に行かなきゃもったいない。

 

次は、現代の厩を見に博物館の裏へ回りました。博物館のすぐ裏にあるポニーセンターです。
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奥にいるのは小型の中半血のペルニ―。手前の栗毛は天皇賞優勝馬のマイネルキッツ。二頭とも耳が横を向いています。警戒させてしまいましたね。お休みのところを、どうもすみません。

暑くもなく寒くもなく。根岸森林公園は散歩やピクニックを楽しむ人で賑わっていました。
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昔、何度か犬の散歩に来ました。懐かしいな。

喉が渇いたので、案内所にあるFlower Garden Cafeで休憩。
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帰る途中、夫の趣味である銭湯巡りにつきあって、蒲田で途中下車。銭湯の黒湯に浸かり、そして蒲田名物の羽つき餃子。
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よい休日でした。

博物館

Posted by くるっクマ