日本美術の流れ@東京国立博物館 本館

2017年の東京国立博物館は、12月25日月曜日が最終開館日でした。
f:id:Melonpankuma:20171226203904j:plain
今年の東博詣では22回でした。よく通いました。

常設展の展示替えした部分を中心に回りました。いつものように、気になったものをメモとして残します(◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

本館 7室 屏風と襖絵―安土桃山~江戸

《◎浅間山図屏風 6曲1隻 亜欧堂田善筆 江戸時代・19世紀
f:id:Melonpankuma:20171226203905j:plain

江戸時代最大級の油絵。近年発見の下絵には、斧で木を割る人と炭焼き窯の番人がみられたが、本絵では転がる木材と炭焼の煙だけが残り、実にシュールな景となった。徹底して風俗要素を排し、風景そのものを描こうとしたようだ。技巧派=田善の代表作

油絵であるが、それほど陰影がなく日本画的な要素を残している。谷文晁の『名山図譜』を参考に描かれたものである。

十二ヶ月花鳥図屏風 6曲1双 狩野永敬筆 江戸時代・17世紀
f:id:Melonpankuma:20171226203906j:plain
狩野永敬は江戸時代前期の絵師。日本初の画伝書『本朝画史』を著した狩野永納の長男として京狩野家四代目を継いだ。
本品は、藤原定家が詠んだ『詠花鳥和歌』の二十四首を六曲一双の屏風に描いたもの。正月は柳と鶯、二月は桜と雉、三月は藤と雲雀、四月は卯花と郭公、五月は橘ち水鶏、六月は撫子と鵜、七月は女郎花と鵲、八月は萩と雁、九月は薄と 鶉、十月は菊と鶴、十一月は枇杷と千鳥、十二月は梅と鴛鴦が描かれている。山で夕陽や朝日を表し、山間からは川の流れが生じ、その流れが左から右へと画面全体を繋いでいる。
和歌と共に眺めると、一曲ごとに美しい情景が広がり、大変優雅な気分に浸れます。朝の情景は下寄りに、夜の情景は上寄りに位置を変えて描かれているのも面白い。

本館 8室 書画の展開―安土桃山~江戸

f:id:Melonpankuma:20171226203911j:plain
いつもながら人が少ない。

《大井川富士山図 1幅 英一蝶筆 江戸時代・17世紀 東京・大倉集古館蔵》
背景に富士山、手前には大井川を渡る旅人の様子が細やかに描かれている。富士山の麓を隠すように山々が連なる様子を描き、富士山が天高くそびえる様子を強調している。

《日金山眺望富士山図 1幅 宋紫石筆 江戸時代・18世紀》
f:id:Melonpankuma:20171226203907j:plain

左端の大瀬崎から駿河湾を経て愛鷹山、富士山とその中腹に宝永山、右に二子山。日金山(十国峠)から箱根越しに展望する景を立体的に表したものだ。自然な奥行きがすばらしい。宋紫石は、長崎から入ってきた南蘋派を江戸に広めた重要な画家。

十国峠から見る景色を描いたもの。
富士山の両脇に、アルミ製のゼリー型のような愛鷹山と二子山に目が行く。

松梅孤鶴図 1幅 伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀
f:id:Melonpankuma:20171226203908j:plain

卵に棒を突き刺したような後姿の見返り鶴、毛先の毛割れで表された振動する松葉、タコの吸盤状の樹皮。強烈な造形だ。若冲は、京都・大雲院に伝わる明時代の「松上双鶴図 陣伯冲筆」を原図に用いるが、極端なデフォルメを加えて斬新な作品に再生させた。

極端なほどにデフォルメされ、卵のように膨らんだ鶴が可笑しくて吹き出しました。鶴の丸さに呼応するように梅の花も樹皮も丸々としていて、なんだか目出度い。嘴と枝の尖り具合や、鶴の黒い尾羽根と松葉の形状もなんだか呼応しあっているように思います。人を笑わせよう驚かせようという絵師の心持ちが発揮されていて、大変好みです。

《◯五節句図 5幅 酒井抱一筆 江戸時代・文政10年(1827) 東京・大倉集古館蔵》

小朝拝(1月1日、元旦)・曲水宴 (3月3日、上巳)・菖蒲臺(5月5日、端午)・乞巧奠(7月7日、七夕)・重陽宴(9月9日)の五節句を描く5幅の連作。宮中行事を格調高く描く。抱一自身が行事の由来を記した小冊子とともに伝来した。

小朝拝は、元日の朝賀の後に大臣以下公卿・殿上人が天皇に拝謁する儀式。曲水宴は、清涼殿に曲がった流れを作り、上流から流される酒の入った杯が自分の前を流れ過ぎぬうちに詩歌を詠む儀式。菖蒲臺は、軒下の台に邪気祓いとして菖蒲を飾っている。乞巧奠は、清涼殿の庭に供物を供えて香を焚き、二星を祈る儀式。重陽宴は観菊の宴のこと。
いかにも抱一らしい、乾いた色調で穏やかな雰囲気を醸し出しています。

《十二ヶ月風俗図屏風 6曲1双 田中訥言筆 江戸時代・19世紀 個人蔵》
f:id:Melonpankuma:20171226203912j:plain
いわゆる月次絵の風俗画版。一月は万歳、二月は初午祭の凧市、三月は田楽、四月は放下、五月は競馬、六月は茅の輪くぐり、七月は盆踊り、八月は月見、九月は牛祭り、十月は不明、十一月は酒まつり、十二月も不明。
田中訥言は江戸後期の絵師で、後に復古大和絵派と呼ばれる画派の祖とされた。天台宗の僧であったが、後に還俗して絵師となった。狩野派の石田幽汀、土佐派の土佐光貞に師事し、大和絵の古典を研究してその復興を志した。復古大和絵派は、後に王朝世界への憧憬は尊王思想と結びつき、多くは王政復古運動にも加わった。田中訥言は、視力を失ったため舌を噛んで命を絶ったと伝えられている。

《源氏物語図 初音・胡蝶 2幅 板谷桂舟(広隆) 筆 江戸時代・19世紀》
f:id:Melonpankuma:20171226203913j:plain

光源氏が最も栄華を誇った時期を描く。右幅は紫の上と明石の姫君の住まう東の対の正月。部屋の中央に姫の実の母・明石の君からの贈物がみえる(第23帖<初音>)。左幅はこれに続く春、船楽が催され、鳥と蝶の華やかな装束を纏った女童を描く(第24帖<胡蝶>)。

右幅の初音は元旦の場面で、庭の築山では子女らが小松を引いている。

月ヶ瀬探梅図巻 巻上 1巻 金井烏洲筆 江戸時代・天保4年(1833)
f:id:Melonpankuma:20171226203909j:plain

(部分)
f:id:Melonpankuma:20171226203910j:plain

鳥洲は上野(群馬県)島村の生まれ。本画巻は、奈良県添上郡の梅の名所月ヶ瀬梅渓の景観を描いたもの。烏洲の西遊の際、この画巻に題跋を寄せた人物は、頼山陽、浦上春琴、篠崎小竹、小石玄瑞ら有名な人物で、烏洲との交友関係を示す貴重な資料となっている。

少量の水でかすれたように描く、いわゆる焦墨渇筆の山水画。題は頼山陽。点描のように線が幾重にも重なって描かれているので、全てが振動しているように見える。

 

これにて、2017年のトーハク巡りは終了。来年は戌年。年が明けたら 、私が愛して止まない犬物が並ぶ予定です。もちろん、新年から通いますよ!