建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの@森美術館

2022年4月19日

先日行った都城市民会館の感動を胸に、森美術館で開催中の「建築の日本展」に行ってきました。
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www.mori.art.museum

本展は、いま、日本の建築を読み解く鍵と考えられる9つの特質で章を編成し、機能主義の近代建築では見過ごされながらも、古代から現代までその底流に脈々と潜む遺伝子を考察します。貴重な建築資料や模型から体験型インスタレーションまで100プロジェクト、400点を超える多彩な展示によって、日本建築の過去、現在だけでなく、未来像が照らしだされることでしょう。

本展は、展示室内の許可された場所で撮影が可能です。

以下、気になったものについてメモを残します。

可能性としての木造

《1_05 ホテル東光園 菊竹清訓 1964年》
菊竹清訓の代表作。鉄骨とコンクリートが目立つ外観で、客室階の5、6階を大梁からつり下げるという大胆な構造だが、富士山を思わせる屋根があり、鳥居のような柱もありと日本的な要素もあって、都城市民会館と共通する雰囲気が漂う。

《1_09 会津さざえ堂 1797年(江戸時代)  重要文化財》
いびつに歪んだ六角形のお堂の模型。中の二重螺旋の斜路もきちんと再現されていました。会津に行ったら観に行きたいと思っている建築物です。福島県で観たいものが溜まってきたので、そろそろ足を伸ばすべきなのかもしれません。
《1_10 古代出雲大社本殿 年代不詳 現存せず》
古代の大社本殿は高さ48mに及ぶ巨大建築だったかもという説による1/50模型。2000年に出雲大社境内で巨大柱(棟持柱)が発見された時の写真も展示してあり、大変想像がかきたてられました。
《1_11 空中都市 渋谷計画 磯崎 新 1962年(計画案)》
こちらもメタボリズムの思想で作られたもの。実現はしなかったが、街の上空に電信柱のように住居を浮かべている。

《1_13 東照宮 五重塔 1818年(江戸時代) 重要文化財|世界文化遺産》
塔の内側は吹き抜けになっていて、木のひずみ緩和を目的に中央の心柱は周りの構造物から鎖で吊るされており、わずかに礎石から浮いている。
《1_14 東京スカイツリー 日建設計 2012年》
五重塔の心柱構造と似た耐震システム「心柱制振」で作られている。

超越する美学

《2_16 伊勢神宮正殿》
式年遷宮で20年毎に作り直される正殿。唯一神明造りで、高床で屋根は棟持柱のある切妻の茅葺き、入り口は屋根の傾斜面側にある平入り。簡素な美しさが却って神々しい。

《2_19 孤篷庵 忘筌 1800年(江戸時代) 重要文化財》
大徳寺塔頭龍光院内に小堀遠州が江月宗玩を開祖として書院造りの庵を建立した。茶室の要素を削ぎ落とし、縁先に中敷居を取り付けて、上半分を障子窓で閉じ下は開放して、にじり口としている。

安らかなる屋根

《3_23 日本武道館 山田 守 1964年》
東京オリンピックの柔道会場として作られた。富士山の裾野を引くような流動美の大屋根の頂点には、古来より魔除けとして用いられてきた黄金の擬宝珠が輝く。

《3_27 牧野富太郎記念館 内藤 廣 1999年》
中央庭園を馬蹄型に囲んだ二つの切妻屋根の建物。植物学者である牧野富太郎の精神に呼応し、景観に配慮された建物となった。

《3_31 京都の集合住宅(NISHINOYAMA HOUSE) 妹島和世 2013年》
NISHINOYAMA HOUSEの景観と妹島和世のインタビューが壁に投影されていた。その地の法律で勾配屋根を設置する制限があったことから発想を得、各住戸は3枚の屋根の下に点在している。

建築としての工芸

《4_37 蟻鱒鳶ル 岡 啓輔 2005年-(建設中)》
近くを通るのでよく目にしている建物。まさか博物館で観るとは。

《4_40 待庵 伝 千利休 1581年頃(安土桃山時代) 国宝》
日本最古の茶室建築である待庵を原寸で再現したもの。
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中に入ることもできます。

連なる空間

20世紀に入り、日本建築が世界に伝えたのは、建築は必ずしも内外を壁で仕切らなくても成り立つこと、部屋の機能は固定されなくてもよいこと、豪華な装飾ではなく素材そのものの表現によって品位が保てることでした。

壁に、岡倉天心の「部屋の実質は屋根と壁で囲まれた空虚な空間に見出されるのであって、屋根と壁そのものではない」が掲げられていた。

《5_43 寝殿造 8-12世紀(平安時代)》
源氏物語の二条院の1/50模型。絵巻物のように吹抜屋台で再現。

《5_48 住居(丹下健三自邸) 丹下健三 1953年 現存せず》
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大変細密に作られた1/3模型。このくらいの大きさになると中の観察もしやすいし下を覗き込むことも容易で、床下の階段を登って中に入った様子までイメージが湧きやすかった。寝殿造りの後にこれを観たので、縁側やベランダという外に張り出した廊下で個々の部屋が行き来できる構造に共通性を感じました。

《5_50 パワー・オブ・スケール 齋藤誠一+ライゾマティクス・アーキテクチャー 2018年》
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ステージ上に設置されたレーザーファイバーと映像によるインスタレーションです。建築空間のスケールを実寸で体験することを目的としています。

東日本大震災時の避難所での居住空間。
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 茶室
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動画も許された範囲で撮りましたので、載せておきます。

《5_54 東京国立博物館 法隆寺宝物館 谷口吉生 1999年》
お馴染みのトーハク法隆寺宝物館です。

開かれた折衷

《6_57 祇園閣 伊東忠太 1927年》
日本建築史を創始者。
築地グルメついでに築地本願寺によく立ち寄るので私にとって馴染みが深く、今回も興味を持って観ました。模型にしても擬洋風建築が奇っ怪です。

《6_62 静岡県富士山世界遺産センター 坂 茂 2017年》
大鳥居と逆さ富士をモチーフに驚かされました。

集まって生きる形

《7_68 52間の縁側 山崎健太郎 2019年(竣工予定)》
現代の長屋。セルのように同型のものが連なる構造。

共生する自然

《9_91 名護市庁舎 象設計集団+アトリエ・モビル 1981年》
外壁は格子状のブロックが連なり、風通しよく太陽の熱を遮る工夫が随所にある。モノトーンの模型では想像できなかったが、実物の写真を観るとまるで熱帯雨林地方の遺跡のような印象で驚いた。

《9_93 ラ コリーナ近江八幡 草屋根 藤森照信 2014年》
本展監修者の藤森照信設計。苔屋根ならぬ草屋根で自然と一体化する。

《9_94 投入堂 1086年-1184年(平安時代) 国宝》
説明不要の奇跡の建築物。

《9_97 House & Restaurant 石上純也 2016年- (建設中)》
敷地に穴を掘ってコンクリートを流し込み、固まった後に土を掻き出して洞窟のような空間を作っている。模型もコンクリート製。

 

美術館を出た後、ノースタワーに移動してシェイクシャックでハンバーガーを食べました。
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ここのメニューの中では、シェイクシャックバーガーが一番のお気に入りです。

博物館

Posted by くるっクマ