春日権現験記絵-甦った鎌倉絵巻の名品-@三の丸尚蔵館
すっかりブログの更新が停滞していますが、前と変わらず、展覧会には足繁く通っています。最近自分好みの展示会が少ないので、特別展を待ち望むことが少なくなっては来ていますが、決して博物館通いに飽きたわけじゃありません。トーハクには相変わらず通っています。しかし、このブログを更新するモチベーションが下がり気味なのは事実で、観たもの全てを記録するのは諦めました。
皇居ランついでに、三の丸尚蔵館で開催中の「春日権現験記絵-甦った鎌倉絵巻の名品-」展を前後期合わせて三回観に行きました。
《春日権現験記絵》は、藤原氏の氏神春日権現の霊験を描いた鎌倉時代の絵巻物で、時の左大臣西園寺公衡(きんひら)の発案で高階隆兼(たかしなたかかね)によって描かれ、春日大社に奉納された全21巻です。付属の目録によって制作時の事情が明確なこと、付属品及び全巻が揃っていること、芸術性、歴史性、稀少性といった面から国宝級とされる名品です(慣習として御物・宮内庁管理の文化財は国宝の指定対象外とされています)。
本展示は13ヵ年をかけて行われてた保存修理が完了した記念として公開されたものです。絵巻の表紙裂の復元には皇后陛下が紅葉山御養蚕所でお育てになった小石丸の生糸を用い、軸首に施した螺鈿は重要無形文化財保持者の北村昭斉氏をはじめとするなど、修復には日本文化の伝統を継承されてきた方々の総力が結集されたそうです。こういう事業自体、材料や技術の継承が行われることも、文化を後世に伝える大切な役割であると思いました。
展示は前期、後期で展示替えをしつつ全20巻のうち15巻に及ぶ大変贅沢なもの。さらに、会場で配布されたリーフレットは各巻のあらすじが掲載され、大変わかりやすいものだったので、これだけでもかなり得した気分になりました。
修復されたばかりの絵巻は大変美しいものでした。とても700年もの月日が流れたとは思えない程に見事で色彩も鮮やかです。この時代の大和絵にはとても心惹かれます。第19巻の「雪の御笠山と春日奥山」なんてどれだけ見ていても見飽きないほど。この美意識が日本で教養として受け継がれるスタンダードであってほしかったなあ。
過去に高階隆兼の作品は何度か見ていて、個々の作品は強烈に覚えているのに、絵師の名前はさっぱり頭に残りませんでした。とにかく覚えにくい。似た音が重なるからでしょうか?なんとか名前を覚えてからも、一度脳裏に浮かんだ漢字を改めて音読しなおして口にしているような状態です。
大して広くない展示室なので巻物を広げられるスペースはそれほどないし、それなりに混雑もしていますので、気に入った場面があっても長く腰を据えて観る雰囲気ではないのが残念。それでも、本作品をこれほどまで多く観られる僥倖を得て大変楽しく過ごせました。
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