新・北斎展@森アーツセンターギャラリー
豊洲市場で朝ご飯を食べた後、走って六本木へ。
https://isshokuta.kuruxkuma.com/2019-01-19-195549/
みんな大好き北斎を観ます。
本展の監修は永田生慈氏で、太田記念美術館副館長を経て津和野に葛飾北斎美術館を設立された北斎研究の第一人者です。2017年、研究のために集めた2000件を越える作品を故郷の島根県に寄贈されました。これらは今後島根県だけで公開されることが決まっており、今回が東京で永田コレクションを見られる最後の機会となりました。
こういった展覧会にありがちですが、入口付近がとても混んでいたのでとっとと通り過ぎ、空いていた3章から見始めました。最後まで見終わった後、1章と2章に戻って遠目から単眼鏡を使いながら気になる作品を見ましたが、最終的に集中力が切れました。
第3章:葛飾北斎期─読本挿絵への傾注
《171 「しん板くミあけとうろふゆやしんミセのづ」 横大判5枚 文化中期(1807~12)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
「しん板くミあけ」とはペーパークラフトのこと。切って組み立てると風呂屋の模型ができる。会場には実際に組み立てたものが展示されてあり、さらに別のスペースには写真撮影可のコーナーが設けられていました。
遠近法を使った奥行きの表現が面白い。
《174 小野小町 大判 文化中期(1809~13)頃 中右コレクション》
隠し文字絵。右肩の「小」と袖の「の」くらいしか。
《186 鳥羽絵集 身づくろい 中判 文化8~11年(1811~13)頃 ベルギー王立美術歴史博物館》
鳥羽絵は大阪を中心に流行った軽い筆致で描かれた戯画。描かれる人物は、目が小さく鼻が低く口が大きく手足が細くて長い特徴がある。髪結に髪を引っ張られる女を描いている。
《217 海老図 紙本一幅 文化中期(1807~13)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
足を地面に着けた向きに描いているのが虫のよう。気味悪くて面白い。
《222 布袋図 紙本扇面1面 文化中期(1808~13)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
袋に背中を預けてくつろぐ布袋様を描いている。袋がやけに大きくて、人をダメにするクッション的なビーズソファのよう。
《226 蛸図 紙本一幅 文化8年(1811)前後 公益財団法人 氏家浮世絵コレクション》
これも海老図とおなじように足を地面に着けた形で描いている。蛸が立ち上がって見据えているような気持ち悪さが面白い。
特別出展《隅田川両岸景色図巻 紙本一巻 文化2年(1805)すみだ北斎美術館》
約100年ぶりに再発見された大作で、すみだ北斎美術館がオープンした際に目玉として展示されて話題になりました。描かれた隅田川の辺りの土地勘があるので余計おもしろい。
第4章:戴斗期─『北斎漫画』の誕生
《242 「総房海陸勝景奇覧」 大大判 文政元年(1818)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
東京湾を中心に三浦半島から房総半島の鋸山あたりまでを鳥瞰図として描いた絵地図。
《250 逆筆布袋図 紙本一幅 文化中期(1810~14)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
袋に体を預けてくつろく布袋様が描かれている。逆筆と題名にあるからには、余興として普段とは違う方向から描いたようだが、とてもそうは思えない程に整っている。
《254 なまこ図 紙本扇1本 文化末~文政初期(1814~19) 島根県立美術館(永田コレクション)》
扇に描かれた二つの海鼠。よりによってなぜ扇子に海鼠かと思うけど、雰囲気よくて印象に残った。
第5章:為一期─北斎を象徴する時代
《307 「冨嶽三十六景 武州千住」 横大判 天保初期(1830~34)頃 島根県立美術館(新庄コレクション)》
宿場に近い隅田川上流の荒川水門の脇あたりの風景。水門の柱越しに富士山が描かれている。絵より馬の引き方と、鼻革から腹帯に紐が伸びているのが気になって。尻尾も巻いて固定してあるなあ。
《371 波に千鳥 中判 天保元~2年(1830~31)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
波と千鳥の組合せは《富嶽百景 海上の不二》にある波頭が千鳥の群れと重なって描かれるのを思い出すが、こちらは波頭と模式化した千鳥の組合せ。
《376 禁酒の猩々 短冊判 天保初期(1830~33)頃 島根県立美術館(永田コレクション)》
酒好きの猩々が寿しを食べて凌いでいる姿が笑いを誘う。
《415 工芸職人用下絵集 548図2帖 文政12~天保2年(1829~31)頃 メトロポリタン美術館》
職人が下絵に使うために作られた版画。
第6章:画狂老人卍期─さらなる画技への希求
《448 狐の嫁入図 絹本一幅 天保15年(1844) 島根県立美術館(永田コレクション)》
画面中央に擬人化したキツネの花嫁行列が描かれ、その下に突然の雨に干していたものを慌てて取り込む人々が描かれている。
《462 弘法大師修法図 紙本一幅 弘化年間(1844~47) 西新井大師總持寺》
元は扁額として作られた。弘法大師が法力で鬼を調伏する姿が描かれている。木の幹に生える霊芝や所々に咲く白い小さな花が闇に光る。
相当な出品数でした。最初から気合を入れて観ていたら最後まで集中力が保たなかっただろうと考えると、途中から見始めたのは正解だったように思います。
ミュージアムショップを出て展望フロアへ。
良い天気。新国立美術館や青山墓地、左上に新宿の高層ビル群が見えています。
東京ミッドタウンから目線を右に向けたら、不思議な建物が目に付きました。なんだかメタボリズム建築っぽい。
調べてみたら、テンプルタウンハウスという米国大使館職員宿舎なんだそうです。ハリー・ウィーズ&アソシエイツ設計で1983年4月竣工。
よく通るところだけど、高いところからしか見えないんじゃ気づくわけないですね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません