東京国立博物館コレクションの保存と修理@東京国立博物館 本館

東博本館2階の特別1室で開催中の「東京国立博物館コレクションの保存と修理」を見ました。

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本特集では、東京国立博物館が手がける保存と修理の成果をより分かりやすく紹介するため、近年に解体を含む根本的な修理を終えた絵画、工芸、考古資料などさまざまな分野から、形態、技法が異なる作品を取り上げます。展示では、作品とともに修理過程で得られた情報も、パネルなどを用いて公開し、博物館が担う文化財修理の役割を広く理解していただくようご紹介します。

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桜の季節なので、平日だったにも関わらずそこそこ人が入っていました。

入り口に本特集の詳細が書かれたリーフレットがありました。

年中行事図屏風 6曲1隻 狩野益信(洞雲)筆 江戸時代・17世紀
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京都東山を背景に、正月の弓始め、梅の下での子供の遊び、祇園祭での鷺舞や山鉾行列など正月から夏の行事が描かれている。15世紀以前制作の「月次風俗図屏風」を踏襲して、応仁の乱以前の様相を示す部分が散在する。筆者可能益信は、狩野探幽の養子で駿河台狩野家の祖。

本品は各扇をつなぐ部品が破損し、糊の劣化で本紙が剥がれやすい状態になっていたのを修復。欠失箇所は、裏面から同質の繊維の紙で補填されたとのこと。

《部分》
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傷んでいたものとはわからない程、立派に修復されています。一扇と二扇のつなぎ目付近に、大きく補修された跡がありました。

淡縹地葡萄唐草文綾天蓋垂飾残欠 1枚 東大寺正倉院伝来 奈良時代・8世紀
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天蓋という傘の周囲に下らされていた飾りの一枚。表側の錦と裏側の綾を分けた状態で保存されてきた。錦の文様は連珠で縁取った七宝繋ぎのなかに花鳥を表したもの。一方の綾には複雑にツルを巻いた大柄のブドウ唐草文が表されている。

 本品は天蓋飾りの裏面部分。アクリル板で覆われているだけに見えるが、実は、アクリル板の圧が作品にかからないように、綿布に作品の厚さの分だけ窪みを作ってマウントしている。

人面付壺形土器 1個 茨城県筑西市 女方遺跡出土 弥生時代(中期)・前2~前1世紀
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弥生時代の東日本地域には,「再葬墓」と呼ばれる墓制が広がっている。これは骨化した人骨を再び壷(壷棺)に収納し,これら数個を2メートル前後の円い穴の中に同時に埋めたものである。これらの壷には稀に口頸部に顔を表現したものもある。本例はその類品中最も精巧なもので,目と口の隈どりは入墨を想起させ,弥生人の風貌をしのばせる。

東博はエクスロン社製の文化財用大型CTを2014年3月に導入しました。本作品は、補修前にX線CTによる調査を行い、欠失部のヒビを確認した上での修理作業が行われたそうです。
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パネルの説明によると、一度バラバラの破片にしたのを再度組み立てたそうです。どこにも継ぎが見えなかったので、まさか組み立てたとは思いませんでした。すごい。

享保雛 1対 江戸時代・18世紀
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この形式の雛人形は享保年間(1716~35)から町方で流行したもので、実際の公家装束から離れた豪華な衣装に特徴がある。江戸では大きな雛飾りを競い合う流行があったが、享保6年(1721年)には幕府によって8寸(約24cm)以上の雛人形を禁止する触書が出された。
本作は大型の飾りを許された上流階級の雛人形と考えられる。

修理前の状態はというと、修理の途中で放置されていたようで、男雛は白塗りのままだったとのこと。東博では、以前の修理で施された白塗りを全て取り除き、オリジナルの上塗層を残して破損部分だけ処置しました。 

小忌衣 浅葱天鵞絨地菊水模様 1領 坂東三津江所用 江戸時代・19世紀
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武将や貴人の役が部屋着として白小袖の上に着用する衣裳。扇形の襟や袖付を千鳥掛けにし、胸紐を華鬘結びにする点が歌舞伎独特である。坂東三津江が末姫(11代将軍家斉の娘)の舞台で、「時今也桔梗旗挙」の小田春永(織田信長)を演じる際に着用した衣裳。

如何にも歌舞伎的な豪華な衣装です。
修理前はビロード地の欠失や裂けがあり、特に襟部に折れ皺が生じていたため、衣桁に掛けての展示ができずにいたそうです。修理は、必要部分を解体後、和紙を裏打ちしての形状保持と絹を当てた補強が施されたそうです。

 

修復品と共に提示されたリーフレットやパネルによって、最先端の資料保存技術の一端を知ることができました。本特集は18回目ということですが、こういう表舞台からは中々見えてこない取り組みこそ私の好物なので、今後も長く続くことを楽しみにしています。