博物館でアジアの旅@東京国立博物館 東洋館
疲れがたまってきたのでリフレッシュに今日も東京国立博物館(トーハク)。それにしても、一体いつになったら全部回れるんでしょうね。
つい最近来たばっかりなのに、東洋館が新しい展示になってました。油断も隙もありません。おそるべしトーハク。
中国屈指のコレクションを誇る上海博物館(シャンポー)との競演だそうです。中国の名品が並びますが、それは撮影不可なのでブログでの紹介は流します。
この日ボランティアツアーをやっていたので、急遽参加しました。
5室 上海博物館との競演-中国青銅器-
殷の青銅器《饕餮文鼎》は饕餮という幻獣の文様がある三本足の容器。饕餮は何でも食べる猛獣だから魔も食べるだろうという発想から魔除けの意味があるらしい。
西周の青銅器《小克鼎》は内部に現存最古の文字・甲骨文がびっしり書かれていて、漢字の成り立ちとして重要視されることから、日本では台東区の書道博物館が所蔵する。
3室 西アジア・エジプトの美術
《舟の模型》上エジプト出土 中王国時代・前2025年~前1794年頃
墓から出土したもの。古代エジプトではナイル川が運搬の要になっていることから、黄泉の世界での移動も船なんだとか。
当時の亜麻布が残っている。
《定礎神像》イラク南部出土 シュメル初期王朝時代・前25~前24世紀は、最も古い歴史を持つ神像。実は建設地に打ち込まれた儀式用の杭である。面高で大きな目をした顔立ちがシュメール美術の特徴で頭に角があります。手を組んで祈りを捧げている。
地下に入ってビックリ。東洋館は全部回った気でいたのに、地下があるのを知らなかった。しかも収蔵品多いし。
11室 クメールの彫刻
《ガネーシャ坐像》カンボジア・ブッダのテラス北側 アンコール時代・12~13世紀
ヒンドゥー教の神様。日本でいうと鎌倉時代あたりに作られたもの。
《楣(まぐさ)》カンボジア、タ・セル アンコール時代・11世紀
まぐさとは、古代の建築で入り口の頭上に水平に渡されたブロックのこと。まぐさ石、またはリンテルとも呼ぶ。聖域への入り口であることから、非常に凝った彫刻が施された。いわば、結界。
12室 東南アジアの金銅像
《ハヌマーン立像》カンボジア アンコール時代・11世紀
手のひらに乗るようなサイズの、とてもかわいらしい像。東洋館正面二階にこれを大きくしたレプリカが飾ってある。インド神話に出てくる猿の神様です。
12室 インド・東南アジアの考古
《楔形石器》前期旧石器時代・前60万年頃 石英岩
礫の周囲全体を打ち欠いて、先端の尖った楔のような形に整えています。叩く・切る・彫るなどの様々な機能をあわせもち、手で握って使用しました。インドの旧石器文化がアフリカ・ヨーロッパ・西アジアのそれと関連していたことを示す重要な資料でもあります。
トーハクで最も古い展示物。こんな時代になると紀元前つける意味あるんだろうか。紀元後の二千年なんて有効数字にならないような気がするんだけど、そこは業界のお約束なんだろうな。
疲れたので一旦トーハクを出て黒田記念館内の上島珈琲でホットサンド。
- ジャンル:コーヒー専門店
- 住所: 台東区上野公園13-43 黒田記念館別館 1F・2F
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- (写真提供:lionkoala)
黒田記念館はトーハクの一施設なんですが、かなり離れたところにあり、一旦門を出なくてはいけません。こんな時に役に立つのが、トーハクのパスポート。何度でも出たり入ったりできます。
東京国立博物館は常設展の入場料が大人620円です。でも、絶対一回では回りきれないので、常設展だけ1年間何度でも入場できるベーシックパスポートをお薦めします。大人1500円だから十分に元がとれます。
休憩した後は、またもや本館へ。
Kindle Unlimitedが始まって、文藝春秋SPECIAL 2016年冬号が世界三大宗教を扱っていたのをきっかけに、最近になって仏教のお勉強をしました。そうなると、仏教芸術にも多少興味が沸いてきます。
11室 彫刻
重要文化財 平安時代・9~10世紀《聖観音菩薩立像》大阪・観心寺蔵
大乗仏教では人々の救済を目的とする菩薩信仰が起こった。観音菩薩は「世の中のできごとを自在に見通す」という意味。菩薩なので装飾品を身にまとう。この菩薩像は来迎印(極楽浄土から迎えに来る印)を結んでいる。
重要文化財 鎌倉時代・12~13世紀《阿弥陀如来坐像》静岡・願生寺蔵
鎌倉時代初期の東国で活躍した運慶周辺の仏師の作と見られています。
阿弥陀如来は無限の寿命を無限の光明を併せ持ち、阿弥陀如来の救いを信じる者は極楽浄土に往生できると信じられている。如来は衣服が簡素で装飾品はない(大日如来を除く)。手には何も持たない(薬師如来を除く)。この如来像は来迎印(極楽浄土から迎えに来る印)を結んでいる。
10室 浮世絵と衣装
重要美術品 鈴木春信《見立竹林七賢》
中国の竹林の七賢人に見立てて。
歌川国芳《和漢準源氏・乙女》
一勇斎とあるのが画号。国芳は後に彩芳舎、朝桜楼、雪谷、仙真とも号した。
和漢準源氏は晩年に製作したシリーズ物で、和漢の有名な武者を源氏物語にでてくる話に絡めて描いたもの。これは「天羅国斑足王悪狐華陽夫人顕」とあります。斑足王は曽我物語、殺生石、宝物集などに出てくる天羅国(インド)の悪王で、足に斑点があることからこの名前があります。外道を信じて1000人の王を殺そうとしますが、1000人目に普明王に会って悔悟し出家したそうです。この斑足王に嫁いだのが妖狐が化けた「華陽夫人」で、斑足王と伴に悪事を働き、後に日本に渡って「玉藻の前」として鳥羽上皇らをたぶらかし、最後「殺生石」となります。
ちなみに、普明王の行動が外道に走った斑足王の心を溶かす場面は、走れメロスみたいなやり取り。いや、元がこれか。
一方、源氏物語で狐の変化物語とされるのは夕顔。植物の夕顔は干瓢の材料になる瓜の花です。中国に瓜は狐の好物とされる説があり、夕顔という名前には狐の影が付きまといます。床の模様が夕顔なんですね、きっと。夕顔は六条御息所の生霊に呪い殺されてしまいます。そういうのも絡めて、この絵なんでしょう。
渓斎英泉《木曾道中・岩村田》
画面左に平塚の一里塚。座頭同士の大喧嘩。
酒井抱一《武蔵野図扇面》
其一展が近いので、琳派を見ると心が躍ります。
俵屋宗達《関屋図屏風》賛 烏丸光広
源氏物語で光源氏が石山寺へ行くシーン。逢坂の関でかつての愛人空蝉の一行と出会い往時を偲ぶ。白装束が光る。
わくらばに行きあふ道を頼みしもなほかひなしや塩ならぬ海(光源氏)
逢坂の関やいかなる関なればしげき嘆きの中を分くらむ(空蝉)
逢坂の関といえば、百人一首 蝉丸の「これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関」がまず第一に浮かびますが、今度から関屋図も記憶に入れておこう。
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