平成28年度新収品展@東京国立博物館 本館

東京国立博物館では、現在、平成28年度新収品の展示をしています。本館2階、特別1室と特別2室で展示されていました。

今回も気になったものをメモとして残します(◎は重要文化財)。

特別1室

《ワヤン・クリ 8体 インドネシア、中部ジャワ 20世紀後半 松本亮氏寄贈 》
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ワヤン・クリはインドネシア中部ジャワの伝統的な影絵芝居でユネスコの無形文化遺産に登録されている。古代インドの叙情詩マハーバーラタやラーマヤナに基づく演目を夜通し上演する。人形は水牛の革で作られ、操作の棒も多くは水牛の角製。展示品は、上写真、左からバゴン、ペトル、ガレン、スマル、トゴグ、ナロド、ウモ、ブトロ・グル。ブトロ・グルは宇宙を支配する神でインドのシヴァ神に当たる。4本の腕を持ち、超能力をもつ牛ルムブ・アンディニの上に立つ姿で表現される。

《ワヤン・ゴレ 2体 インドネシア、中部ジャワ 20世紀 田枝豪氏寄贈 》
ワヤン・ゴレはインドネシア中部ジャワの行われる木彫りに人形芝居。イスラーム教に基づくアミル・ハムザ物語(開祖ムハンマドの親族が各地でイスラームの教えを広めながら冒険を繰り広げる話)が上演される。上写真の左の二体のうち、左の笑い顔の人形はジウェン、右の赤い顔の人形はイスラム教の開祖ムハンマドの叔父にあたる将軍ウマルモヨ。

38年前に放送されていた人形劇プリンプリン物語が、この7月からBSプレミアムで再放送されているそうで、懐かしいなあと思っていたところに、タイの人形が並んでいたので、つい足を止めました。

《ヴァジュラバイラヴァ(金剛怖畏尊)像 1面 中央チベット 18~19世紀 卯里欣侍氏寄贈》
木綿に描かれたチベット仏教の仏画で、タンカと呼ばれるもの。日本では大威徳明王(だいいとくみょうおう)として知られるヤマーンタカを中央に大きく描いています。画面左上にチベット仏教ゲルク派祖師ツォンカパ、右上に釈迦仏が描かれている。

《サットサイシリーズ 5枚 ダティア派 インド 18世紀後半 鶴岡龍氏寄贈 》
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サットサイシリーズは10枚の連作(うち5枚を展示)で、インド中部の藩王国オルチャのマハラジャが主人公の恋物語。濃紺の縁に場面解説が記されている。本来は200枚以上で構成されていたと考えられる。特に繊細な筆致の秀作であり、このシリーズのまとまった例として世界的にも貴重。

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《サラスヴァティー 1枚 ビカネール派 インド 19世紀初 鶴岡龍氏寄贈 》
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サラスヴァティーは知を司るヒンドゥー教の女神。肌は白く、額に三日月印、4本の腕を持ち、2本の腕には数珠とヴェーダ、もう1組の腕にヴィーナと呼ばれる弦楽器を持ち、白鳥の上に座る姿で描かれる。日本では七福神の弁財天として親しまれる。

《貝葉経 1巻 インド・オリッサ地方 18~19世紀 鶴岡龍氏寄贈 》
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貝葉経(ばいようきょう)は葉に書かれたお経。ヤシの葉に釘のようなもので傷をつけ文字を刻んだもの。
タイ展で貝葉写本を観たばかり。ここでさらに凝った経に出会えるとは思いませんでした。 

特別2室

《◎准胝仏母像 1幅 平安時代・12世紀》
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准胝仏母は密教の胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)に描かれる仏。過去無量の諸仏の母とされ、真言宗の醍醐寺流では観音のひとつとしても信仰される。着衣の文様に切金が用いられている。

《玄奘三蔵像 1幅 鎌倉時代・14世紀 山本達雄旧蔵》
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背中の大きな笈(おい)に多数の経典が積み、経文を唱えながら歩む旅姿の像。東博所蔵の重要文化財の玄奘三蔵像とほぼ同様の図像で、彩色などもほぼ踏襲されている。

《色紙三十六歌仙図屏風 6曲1隻(1双の内) 近衛信尹、松花堂昭乗他筆 江戸時代・17世紀 山本達雄旧蔵》
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三十六歌仙の図と和歌を記した色紙形36枚を貼り交ぜた屏風。歌合形式で左右に分けて、左隻18枚、右隻18枚を配置。絵は本阿弥光悦筆、書は光悦10枚、小堀遠州10枚、烏丸光広5枚、松花堂昭乗5枚、近衞信尹6枚と伝称されている。

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どの歌人もお顔がきれいで印象に残る。

《雀の発心 1巻 室町時代~安土桃山時代・16世紀 美田悦子氏寄贈》
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室町時代以降愛好された御伽草子を描いた作例。自らの子どもを蛇に食われた小藤太という雀が、多くの鳥たちと和歌を交わした末に出家し、念仏三昧の日々を送るという物語。縦の大きさが通常の半分程度の小型絵巻。

 

《玄奘三蔵像》と《色紙三十六歌仙図屏風》の元の持ち主、山本達雄氏は5代目の日銀総裁で政治家。孫の山本達郎氏は東洋史学者で、東京大学名誉教授。元号『平成』の名付け親として有名な方です。