博物館に初もうで 犬と迎える新年@東京国立博物館本館

現在、東京国立博物館本館の特別1室と特別2室では、企画展「博物館に初もうで 犬と迎える新年」を開催中です。
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平成30年の干支は「戌(いぬ)」です。犬は古くから世界中で人間に飼われていた、最も身近な友達ともいえる動物で、様々な文化に影響を与えてきました。それは日本も例外ではなく、遅くとも縄文時代には犬は人間と共に生活する親しい存在でした。

この特集は、日本人に愛されてきたかわいらしい子犬や珍しい異国の犬の造形に注目する「いぬのかたち」と、常に人と共にあった犬の文化史的な意義を追う「いぬとくらす」という2つのテーマで人間と犬とのかかわりを紹介いたします。時に世俗から離れて暮らす理想の生活のなかに、時に都市の雑踏のなかに、あるいは美女に抱えられてあらわされた犬。日本人の愛した犬のイメージとバラエティーに富んだ素材や表現による作品を通じて、そこに込められた愛情深いまなざしと共に新年を迎えます。

新春イベント開催日の特別1室は、大変混雑していました。
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以下いつものように、気になったものをメモとして残します。

朝顔狗子図杉戸 2枚 円山応挙筆 江戸時代・天明4年(1784)
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あざやかな群青と緑の配色が発する清涼感、じゃれ遊ぶ子犬たちの愛くるしさ。当館庭園内、応挙館の廊下を仕切る杉戸絵。応挙館は、もと愛知県・明眼院【みょうげんいん】の書院で、三井財閥総帥益田孝を経て当館へ寄贈された。画家の優しいまなざしを感じていただきたい。

朝顔の側で遊ぶ5匹の仔犬。ころころと丸く柔らかい体、離れた目や耳、短い鼻梁、短くて先が尖った尻尾。和犬大好きの私とししては、応挙の仔犬ほどに心揺さぶられるものはなく、こんな杉戸が書院にあったら、本を読むどころではありません。特に左側の赤毛の仔犬。私、この子だけでご飯三杯いけます。

《狗子図 1幅 円山応瑞筆 江戸時代・18世紀》
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応瑞は応挙の長男。応挙の画法を継承し、円山派(まるやまは)の中心的存在として活躍した。応瑞は、父応挙の狗子図(くしず)をそのまま踏襲して、この作品を描いている

ColBase:狗子図

菫と、白と斑の二匹の仔犬。愛らしい仔犬の描き方は父応挙譲りです。白毛のリラックスした柔らかい眼差しが愛らしい。仔犬を仰向けにするなら、せっかくだから仔犬特有の柔らかいお腹をもっと描いてほしかった。

狗子 1幅 三島蕉窓筆 明治時代・19世紀
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蕉窓は明治から昭和初期にかけて活躍した画家。はじめ四条派を学び、のち菊池容斎に入門し、渡辺省亭とともに容斎門の俊秀といわれた。この絵を見ると応挙の子犬を学んだことが明白であり、応挙の狗子図が近代以降も強い影響力を持っていたことが分かる。

ColBase:狗子図

なだらかな傾斜に蒲公英と土筆、それに、白と斑の二匹の仔犬。斑の仔は、蒲公英の綿毛を咥えている。

《洋犬図絵馬 1面 酒井抱一筆 江戸時代・文化11年(1814) 東京・總持寺蔵》

江戸の料理屋八百膳の当主が自分の生まれ年の干支、戌にちなんで洋犬を絵馬として奉納したもの。洋犬は江戸時代初期から雲谷派や長谷川派によってしばした描かれている。抱一は鎌倉・鶴ケ岡八幡宮にあった有名な洋犬図(雲谷派の等宿の作)を参考にしたといわれる。

巨大な絵馬にスムースでドロップイヤーの洋犬が二頭。雌雄でしょうか。大きい方は、ブラックタンで胸が深いので、断耳断尾をしていないドーベルマンに似ています。となると、小さい方の被毛はレッドかな。

《竹犬図(模本) 1幅 西山養之(生没年不詳)模写、原本=辺景昭筆 江戸時代・文政7年(1824)、原本=明時代・14~15世紀》
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原本は辺景昭筆。花や竹や羊歯の生える多孔質な奇岩の下に、シルバーの被毛を持ったサイトハウンドが描かれている。サルーキかもしれません。首輪につけた赤いアクセサリが、犬の優雅な雰囲気を印象づけます。竹の下に犬を描くのは、「笑」に通じて縁起がよいとされています。

狗子図(模本)(唐画手鑑 第二帖のうち) 1帖 狩野常信(1636~1713)模写、原本=李迪筆 江戸時代・17~18世紀、原本=南宋時代・12世紀
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原本は李迪筆。どちらも斑の仔犬。毛一本一本を丁寧に描いている。

《群狗図(模本) 1幅 義文(生没年不詳)模写、原本=毛益筆 江戸時代・寛政6年(1794)、原本=南宋時代・12世紀》
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原本は毛益筆。ころころした仔犬が7匹。右端で目を開けている一匹を除いて、互いに寄り添って寝ています。穏やかな雰囲気に、見ているこっちまで眠くなりそう。

《犬図(模本) 1幅 安倍養年(生没年不詳)模写、原本=李迪筆 江戸時代・天保11年(1840)、原本=南宋時代・12世紀》
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原本は毛益筆。サルーキのようなサイトハウンドが毛色の濃い仔犬を抱いています。穏やかな母犬に守られながらも警戒して身を寄せ合う仔犬の様子が微笑ましい。
それにしても、仔犬がまるでサイトハウンドの仔犬らしくないので、想像で描いたものか、はたまた、よほどタイプの違う犬と交配したかと、余計なことを思います。

水仙に群狗 1枚 礒田湖龍斎筆 江戸時代・18世紀
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湖龍斎は江戸時代中期の浮世絵師で、鈴木春信(すずきはるのぶ)のあとに美人画家として活躍した。この作品で湖龍斎は、応挙の子犬と同類の、耳の垂れたむくむくとした犬を描いている。応挙の影響とは断定できないが、この時期こうした子犬の絵が好まれたことは注目される。

藁葺の日陰に咲く水仙の傍らで、白や斑や黒の仔犬が固まって寝ている。上の、義文が模写した《群狗図》と仔犬らが同じ構図をしています。

《薔薇に狗子 1枚 歌川広重筆 江戸時代・19世紀》
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風景版画で有名な広重は、北斎とともに花鳥版画の分野でも大きな役割を果たした浮世絵師である。花鳥画では応挙(おうきょ)の流れをくむ京都の四条派(しじょうは)の影響を受けたとおいわらるように、広重は、応挙風の子犬3匹が薔薇の花の下で戯れるさまを描いている。

ColBase:薔薇に狗子

二色咲きの薔薇の下で戯れる三匹の仔犬。白毛がもう一匹の背中によじ登っています。奥の犬は後脚で首を掻いています。前の二匹で隠れていますが、実はとんでもない姿勢になっているような。

《三十六禽続・犬 1枚 魚屋北溪筆 江戸時代・19世紀》
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犬の顔、魚の切り身に空摺りが入っている。仔犬が魚の切り身を咥えて運んでいる。
強く咥えた口、重そうに首を傾げて、踏ん張った四肢や尖った尻尾にも力が入っているのが伝わってきます。顔のタンがやけに大きいのが、愛らしい。
魚屋(岩窪)北渓は葛飾北斎の門人。狂歌本の挿絵や狂歌摺物をよく手がけた。

《狗子 1面 柴田是真筆 明治時代・19世紀》
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竹と犬で吉祥の意を表したもの。
精緻で可憐な画の印象がある是真にしては、脱力系な犬だこと。

土筆に犬 1枚 竹内栖鳳筆 明治時代・19世紀
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土筆の生える丘で遊ぶ9匹の仔犬。竹内栖鳳の犬というと、キャバリアに似た長毛の仔犬を描いた《爐邊》が印象深いですが、和犬もかわいらしい。

獅子・狛犬 1対 南北朝~室町時代・14~15世紀
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板彫狛犬 1枚 鎌倉時代・13~14世紀
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染付子犬形香炉 1合 平戸 江戸時代・19世紀
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愛らしい子犬をかたどった香炉。頭と胴で分かれ、口と両耳の孔が内部に通じている。三川内焼は現在の長崎県佐世保市三川内町で焼かれた磁器をいい、平戸焼ともよばれる。純白の天草石を用い、彫塑的な細工の技に見どころがある。

《犬形置物 1個 ドイツ・ドレスデン 19世紀》
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腹ばいになってくつろぐスパニエル。頭が小さくて被毛がホワイトレッドで尻尾が長いところを見ると、キャバリアかな。撮る角度で目の光具合が変わり、表情に変化があるのが面白い。見上げるような視線になるように撮ってみました。離れたところにいる飼い主を目で追っているような表情に見えるでしょうか。

緑釉犬 1躯 中国 後漢時代・2~3世紀
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先の丸まった耳と尻尾を立て、短い四肢を踏ん張って吠える姿は愛嬌(あいきょう)があります。首環と胴環には、多産の象徴とされる子安貝を飾っています。墓を守る番犬とも、死者を冥界(めいかい)へ導く犬とも言われています。表面の緑釉とともに、表情豊かな造形は後漢時代の陶俑や動物模型に多く見られます。

鼠のような顔が印象に残ります。解説に吠えているとあるのに、全く吠えているように見えないのは、口周りの筋肉が緊張していないせいでしょう。この口は、オヤツを放り込みたいような気分にさせます。

産衣 紫縮緬地子犬雪輪笹模様 1領 野口彦兵衛旧蔵 江戸時代・19世紀
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生まれたばかりの赤子の産衣は通常の小袖とは異なり、一幅で身頃をつくり背中に縫い合わせがない「一つ身」。腰の高さまで総繍で模様を表わし、三つ葉葵紋の五つ所紋を白く染め抜くデザインから、武家の子女の産衣であろう。

ColBase:産衣 紫縮緬地子犬雪輪笹模様

雪輪に笹の古典文様に仔犬を組み合わせた愛らしい文様。

行書桃花源記巻 1巻 楊守敬筆 中国 中華民国2年(1913)
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東晋の唐淵明の名作「桃花源記」を。1880年に来日した清末の学者楊守敬が行書で揮毫した作。漁夫が道に迷い、桃の林の中を通ってたどり着いた理想郷には、鶏や犬の鳴き声が聞こえていた。ユートピアにも、人類との付き合いが長い犬は欠かせない存在であった。

頭から7列目に「春蠶收長絲 秋熟靡王税 荒路曖交通 鷄犬互鳴吠」とある。

桃花源図(韓画帖のうち) 1帖 金喜誠筆 朝鮮 朝鮮時代・18世紀
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金喜誠は、朝鮮時代後期にあたる英祖期(1725~1776)の画員画家。「桃花源記」に書かれる桃源郷の様子を2場面に描く。漁師が歓待される場面では、住人の傍らに黒犬が2匹見え、平和でのどかな風景を演出する。場面構成には、中国・仇英の影響が指摘されている。

桃の花が咲く、美しく豊かで平和な村が描かれている。庭先の母子の前に一頭、漁師を歓迎して集まった人の中にもう一頭、犬の姿が見える。

西園雅集桃李園帰去来図(模本) 1巻 狩野〈晴川院〉養信模写、原本=仇英筆 江戸時代・文化11年(1814)、原本=明時代・16世紀
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桃李園に帰る人を描いたもの。桃李園とは、李白が詠んだ「春夜宴桃李園序」に関わる場所のことでしょうか。一種のユートピアとして、そう呼んでいるのかもしれません。花で飾られた天蓋のある船が高士を乗せて進む。到着に気づいて犬が駆け寄るのが竹の影に見える。花が咲き、太湖石がある庭に、家族が待っている。

山水図 1幅 伝夏珪筆 中国 南宋~元時代・13~14世紀
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夏珪【かけい】は南宋の宮廷画家ですが、本作はそれよりやや時代の下る作品と思われます。遠景から瀧が流れ落ち、勢いよく手前の水流として流れ出しています。夏珪様式は明時代になると浙派【せっぱ】と呼ばれる画風に変化していきますが、それ以前の重要な過渡的作品です。

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《山水図 1幅 伝姜希顔筆 朝鮮 朝鮮時代・15世紀》
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作者と伝わる姜希顔(1417~64)は、1456年北京に派遣され、明代の宮廷画家に感銘を受けたという文人画家。本図も明の宮廷で活躍した戴進(1388~1462)の影響が顕著な作品である。茅屋の前では老隠者が、童子・犬と共に客人を迎えている。

客人は船の上。童子を伴って主人が出てきたので、庭を掃除していた従者が手を差し伸べています。

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迎えている犬の脚が短くて、まるでダックスフントのよう(だとしたら、客人を迎えるのに吠え立てそう)。ペキニーズ等中国原産のなかに短足な犬種があるので、この手の体型の愛玩犬も実際にいるかもしれません。

《獅子 1躯 江戸時代・19世紀》
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顔を大きく表した獅子。ずんぐりとした体も愛らしいが、鼻を低くし、下唇を噛んだ顔は、鬼にも似てユーモラスである。大きさから、小さな社殿に安置されたと思われる。「帝国博物館」時代の明治29年(1896)、長野県の中野氏から寄贈された当館創設期の蒐集品の一つ。

お顔も愛らしいが、投げ出された後脚もよい。角がないので獅子なのだろうが、口は吽型。

北楼及び演劇図巻 1巻 菱川師宣筆 江戸時代・17世紀
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江戸を代表する二大悪所、北楼(吉原遊郭)と芝居小屋を題材とした複数の図を集めて一巻としたもの。各図の最後に年紀の異なる落款がある。本図は、吉原へ通う道として知られる日本堤に犬がいる様子を描いた部分。寛文12年(1672)の年紀を伴う。

近世職人尽絵詞 下巻 1巻(3巻のうち) 鍬形蕙斎筆 江戸時代・19世紀
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江戸で暮らすさまざまな職業の人々を、鍬形蕙斎が3巻に描いたもの。蕙斎は畳職人の子で北尾重政に浮世絵を学び北尾政美と号した。幕府老中を勤めた松平定信が発案したとされ、上巻に大田南畝、中巻に朋誠堂喜三二、下巻に山東京伝が詞を加えている。

ColBase:近世職人尽絵詞

右側の図には、乳をあげている犬、砧打ち、蝋燭屋、勧進を終えた名山講中、卵売りが描かれている。

名所江戸百景・高輪うしまち 1枚 歌川広重筆 江戸時代・安政4年(1857)
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「高輪うしまち」などに観られる近景を極端に拡大して遠近感を強調した構図は、広重晩年の特徴とされていますが、初期の「東都名所」にも同じ傾向が見られます。「名所江戸百景」の各図にはそれまでの風景画制作を経た広重の様々な個性が結実しています。

高輪から望む品川の海、近景に大きく大八車を描いている。仔犬の後ろ姿と藁を咥えた仔犬の愛らしさ、それに、西瓜の皮がのどかな海辺の雰囲気をもたらしています。

名所江戸百景・猿わか町よるの景 1枚 歌川広重筆 江戸時代・安政3年(1856)
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歌舞伎の芝居小屋があった猿若町の賑わいを描いたもの。人がいるところには必ず犬がいる。野良犬が多くいた時代なので、街を歩く人達も犬に特別関心を払っていない様子なのがよい。

婦女図 1幅 田村水鴎筆 江戸時代・18世紀
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桜の咲き誇る庭。髪を潰し島田に結った女。着物の柄が華やかです。足元で赤白の犬が日向ぼっこをしています。犬も丸まっているし、女も帯に手を入れているところを見ると、花冷えしているようです。

《犬を戯らす母子 1枚 鈴木春信筆 江戸時代・18世紀》
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鈴木春信は錦絵(多色摺木版画)の誕生に貢献した浮世絵師。華奢で可憐な人物を描いて一世を風靡し、その後の浮世絵に大きな影響を与えた。本図のような、母と子、そして飼い犬とが触れ合うさりげない日常を優しく描き出すことを得意とした絵師でもあった。

女が手にするボールを欲しがって、黒い狆が立ち上がっています。犬をじゃらしてばかりの女にかまってほしいのか、頭を芥子坊主にした子供が背中によじ登ろうとしています。

《美人子供に小犬 1枚 喜多川歌麿筆 江戸時代・文化3年(1806)》
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子供も仔犬もかわいらしいのだけれど、子供の右手が逆についてるような。芥子坊主の子は着物におはしょりがしてあります。浮世絵ではおはしょりをあまり見ないので珍しい気がしましたが、育ち盛りで激しき動き回る子供なのだから、おはしょりをするのが当然ですね。

《五金之内・銅(狆洗い美人) 1枚 魚屋北溪 江戸時代・19世紀》
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この後すぐに犬が身を震わせて水気を飛ばすのが目に見えているので、着物が汚れるんじゃないかと冷々するし、カレイが吊り下げられているのも気になるし。

《狆だき美人 1枚 菊川英山筆 江戸時代・19世紀》
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《狆(博物館獣譜のうち) 1帖 博物局編 江戸~明治時代・19世紀》
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明治時代、天産部が情報を整理する目的で編纂した図譜類には、多くの江戸の博物図が解体されて貼り込まれた。本書は、「幻の獣譜」とも称される堀田正敦の『獣譜』の復元につながる約200以上の図を収めていることが、資料部の研究員によって明らかにされた。

ColBase:博物館獣譜

江戸時代に長崎に持ち込まれた洋犬の図。図中に狆とあるのは、小型の犬という意味だと思われる(現在、狆と呼ばれている日本原産の愛玩犬種とは関係ない)。展示で一番右にあった黒犬(阿蘭陀持渡)の図に高さ一尺三寸許とあるので、これが体高だとしたら柴犬と同じくらいの大きさ。展示で一番左にあった白黒の狆(阿蘭陀持渡)が八寸五分とあるので、これがシーズーのサイズ感。

《唐犬・ムクイヌ(随観写真のうち) 1冊 後藤光生編 江戸時代・宝暦7年(1757)》
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田村藍水【たむららんすい】(1768~76)の門人後藤光生の編になる。図の描き方などよりみると、栗本丹洲の筆本の模写であろうと思われる。名称、産地、寸法、特徴、味などを記す。文中にみえる「灌園」は幕府の御家人岩崎灌園【いわさきかんえん】(1786~1842)で、彼の所持したものと考えられる。

ColBase:随観写真

江戸婦女 1幅 橋本周延筆 明治時代・19世紀
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母子ともに華やかな装いです。狆が櫛を咥えて悪戯しているのに、女の子が驚いています。

 

華やかさに欠けるためか、応挙の犬が出てくるまでは、あまり日本画で犬の姿を見ないような気がしていましたが、昔から人の暮らしに寄り添って生きてきた動物なだけあって、さすがに探せばいろいろと出てくるようですね。当時、室内犬の狆を除けば、街中にいるのは野良犬ばかりでしょうから、悪戯するわ小汚ないわで、それほど愛される存在ではなかったろうなと思います。現代の方が、犬達の存在感はありそうです。


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この日は、便殿(旧貴賓室)が公開されていました。