中国の絵画 墨の世界の生き物たち@東京国立博物館 東洋館

肌寒い天気になったこの日、モフモフした絵が多く展示してありそうなので、東洋館へ行きました。
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4階に直行して8室へ。

東洋館 8室 中国の絵画 墨の世界の生き物たち

墨という素材は、濃淡のグラデーションを表現するのに優れています。また、水分の含有量を変え、乾いた筆遣いと湿った筆遣いを自在に組み合わせることができます。中国では古来、この墨の特性を活かして、陸・海・空に生息する様々な生き物が描かれてきました。

以下、気になったものについてメモを残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

栗鼠図軸 1幅 松田筆 中国 元時代・14世紀
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松田は画史に記載はないが、本作落款に「松田山人九十一歳筆」、また「葛氏叔英」の印があることから、本名を葛叔英という画家であったことがわかります。渇筆を利用して栗鼠のごわごわした毛並みを表現し、見つめあう目元が何とも愛らしい作品です。

ColBase:栗鼠図

リスの毛並みの見事なこと。膨らんだ尻尾の柔らかな表現がたまりません。

《◎竹鶏図軸 1幅 蘿窓筆 中国 南宋時代・13世紀
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蘿窓は南宋末の禅僧で、日本の水墨画に大きな影響を与えた牧谿と画意が等しいともいわれた。五更(午前4時)の未だ夜があける前の幽暗の竹下に潜み、文武勇仁信の五徳を備えるという鶏を描いている。尋常でない目付きの鶏は、悟りを得た禅僧のようにもみえる。

この目付きの悪さは忘れがたい。去年の「博物館に初もうで」展以来です。

《猿猴図軸 1幅 伝牧谿筆 中国 南宋~元時代・13~14世紀 個人蔵》
日本人に最も愛された中国人画家、牧谿の作品です。テナガザルが長い手で子猿を抱える姿が微笑ましい。

《藻魚図軸 2幅 劉節筆 中国 明時代・15世紀 個人蔵》
藻魚は、豊穣・立身など様々な吉祥の意味をもつ。輪郭線を用いない没骨法で薄暗い水中を泳ぐ鯉を描く。魚のどこかコミカルな顔が印象に残る。

龍図軸 1幅 李焲【火夜】筆 中国 明時代・15~16世紀 東京・公益財団法人常盤山文庫蔵
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横長の画面に龍の頭部をクローズアップしてで描いたもの。風と暗雲の中に現れた龍を荒々しい筆使いで描き、吹き墨で大粒の雨を表している。

《藻魚図屏風 2曲1隻 伝韓秀実筆 中国 明時代・16~17世紀 東京・公益財団法人常盤山文庫蔵》

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元は二幅対の掛け軸を屏風に仕立てたもの。藻や小魚を蹴散らすように泳ぐ大魚を画面いっぱいに描いているため、大魚の重量感まで感じられる作品。単眼鏡で見ると、小魚の鱗一枚一枚まで細やかに描かれているのがわかる。

雑画図冊 1帖 高鳳翰筆 中国 清時代・康煕53年(1714)
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高鳳翰は、字を西園、号を南村、または南阜といい、山東省胶県の人。はじめ安徽歙県県丞などを勤めましたが、次第に官僚生活に興味を失って揚州に寓居して売画生活を送りました。55歳で病により右手が使えなくなり、以後は左手で作画したことから尚左生とも号しました。

《芦雁図扇面 1枚 辺寿民筆 中国 清時代・18世紀》
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辺寿民は初名を維祺、字を頤公、号を漸僧、葦間居士などといい、山陽(江蘇省)の人。画は粗放な水墨を用い、没骨法による芦雁を得意としました。楊州八怪の鄭燮・金農らと交友があり、揚州八怪の一人にあげられます。どことなくユーモラスな芦雁が魅力的です。

Colbase:芦雁図扇面

扇面に草むらで休む雁の姿を描いたもの。光沢のある紙がキラキラと光り、穏やかな日差しのように感じられる。墨の色も鮮やか。

《芦雁図冊 1帖 辺寿民筆 中国 清時代・乾隆9年(1744)》
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葦の生えた水辺。水に上半身を沈めた雁の姿がユーモラスで印象に残る。
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《魚蔬図巻 1巻 永瑢筆 中国 清時代・18世紀》
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永瑢は乾隆帝の第六皇子で詩書画を巧みにした。湿潤な墨面の広がりを活かして様々な野菜と魚を描いている。

山水花卉画冊 1冊 計芬、陶琯筆 中国 清時代・19世紀
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 計芬は初名を偉といい、字を小隅、号を担石、秀水(浙江省嘉興)の人。陶琯(1794~1849)は字を梅石、号を梅若、鈕雲といい、同じく秀水の人で、緑蕉山館に住しました。計芬は陶琯の姉婿でしばしば共作しており、構図と独特の筆致が魅力的です。

Colbase:山水花卉画冊

 

今回は動物がモチーフで馴染みやすく、とても楽しめました。特に辺寿民の芦雁は惹きつけられるものがありました。どこか若冲の菊を連想します。もっと他の作品も見てみたい。