琳派 ―俵屋宗達から田中一光へ―@山種美術館

今にも降り出しそうな重い空の下、山種美術館に行きました。
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琳派 ―俵屋宗達から田中一光へ―」展です。

館内は大変賑わっていました。さすが琳派、人を集めますね。

以下、気になったものについてメモを残します。

琳派の流れ

俵屋宗達 (絵)  鹿下絵新古今集和歌巻断簡 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
『新古今和歌集』にある28首を散らし書きにした長巻を戦後に裁断したもので、俵屋宗達が描いたと伝える金銀泥の鹿の下絵に本阿弥光悦が書をしたためている。本品は、振り返る牡鹿を描いた料紙に西行法師の「こころなき身にも哀れはしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮」と書かれている。

本阿弥光悦 (書)  四季草花下絵和歌短冊帖 ◎ 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・彩色・墨書 山種美術館
こちらの下絵もおそらく宗達だろうといわれている。装飾された短冊が実に美しい。金地に意匠化された文様が金銀で描かれている。

《俵屋宗達 烏図 17世紀(江戸時代) 紙本・墨画》
初見。こんなかわいらしいカラス、今まで見たことありません。宗達のゆるキャラの中では断トツ好きです。

4《伝 俵屋宗達 槙楓図 17世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色紙本金地・彩色 山種美術館 ※本作品のみ撮影可
伝 俵屋宗達 槙楓図 17世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色紙本金地・彩色 山種美術館
展示室は基本的にモバイル類の使用が禁じられていますが、本品だけは撮影が許可されていました。

住友財団の助成により修復後の初公開。金地に余白を取り、直立と湾曲する幹、緑と赤い葉の対比が面白い。

《尾形光琳 白楽天図 18世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色》
能『白楽天』を画題に大胆に意匠化して描かれたもの。波の中、転覆しそうなほど傾いた唐船が印象的です。

酒井抱一 秋草鶉図 【重要美術品】 19世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色 山種美術館
金地の背景に秋の草花の影に潜む鶉の親子が描かれている。空にはラグビーボールのような上弦の月。何度見ても素敵です。

《酒井抱一 糸桜図 19世紀(江戸時代) 紙本・彩色 》
縦長の構図の中に抱一の気品ある繊細なタッチが冴えます。

鈴木其一 伊勢物語図 高安の女 19世紀(江戸時代) 絹本・彩色 山種美術館
通っていた男が、愛人のだらしない姿を目撃してしまう場面を描いたもの。女のご飯の盛り方が大胆で何度見ても、笑ってしまいます。同じ構図の作品を光琳や抱一も残していて、これも琳派伝統のモチーフなんだそうです。

鈴木其一 四季花鳥図 19世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色 山種美術館
右隻に春夏の草花と鶏の番を、左隻に秋冬の草花と鴛の番を描いた二曲一双の金地の屏風。其一にしては控えめですが、生命感あふれる描写と鮮やかな色使いが美しい。

《田中抱二 三十六歌仙図 19世紀(江戸-明治時代) 紙本金地・彩色 》
琳派伝統のモチーフで、光琳、抱一、其一も同じ構図の作品を残している。
今ちょうど出光美術館で歌仙を取り上げた展示をしているので、本品の印象を忘れないうちに行かねば。

《神坂雪佳 松鶴図 1936(昭和11)年 絹本・彩色》
松の下に集まる五羽の鶴を描いたもの。たらし込みを使い意匠化された松の表現が好みです。

《神坂雪佳 蓬莱山・竹梅図 20世紀(大正-昭和時代) 絹本・彩色》
金銀を多用し華やかに描いた三幅対。松に金銀の枝に蓬莱山でかぐや姫を連想した。

《田中親美 平家納経 願文(模本) 20世紀(大正-昭和時代) 紙本・彩色・墨書 東京国立博物館》
田中親美は、生涯にわたって、数々の国宝の模写・模造を制作し続けた人物で、国宝「平家納経」の模本制作は、絵や書を写すだけでなく、絢爛豪華な装飾料紙、金具、経箱の模造まで徹底的に再現したもので、全部で五組制作され、最初に作られた一組は嚴島神社に納められた。展示作品は草をはむ牝鹿が描かれている。原本は平清盛願文表紙の見返絵で、慶長7年の修復の際に加えられたもので、俵屋宗達が手がけたものとされている。

琳派へのまなざし

荒木十畝 四季花鳥 秋(林梢文錦) 1917(大正6)年 絹本・彩色 山種美術館

荒木十畝 四季花鳥 冬(山澗雪霽) 1917(大正6)年 絹本・彩色 山種美術館
ちょうど目黒雅叙園の百段階段を見た後だったので、十畝つながりで印象に残った。

菱田春草 月四題 1909-10(明治42-43)年頃 絹本・墨画淡彩 山種美術館
桜、柳、葡萄、雪それぞれと月を描いた四幅対。静けさが美しい。

《福田平八郎 芥子花 1940(昭和15)年頃 紙本・彩色 山種美術館》
意匠化されたパステルカラーの芥子の花と蕾が、日本画ながら実にポップ。可愛らしい。

《福田平八郎 筍 1947(昭和 22)年 絹本・彩色 山種美術館》
こちらも実にポップな作品。竹の葉には色を付けずに全面に散らし、二本の少し延びた筍が色鮮やかに描かれている。

速水御舟 翠苔緑芝 1928(昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
日本画なんだけれども熱帯のような空気感。印象はアンリ・ルソー。

 

《田中一光 JAPAN 1986(昭和61)年 紙・シルクスクリーン・ポスター 東京国立近代美術館》
平家納経の見返絵に描かれた草をはむ牝鹿がモチーフ。オレンジ色の背景に5色でJAPANの文字。

《田中一光 Concert, Projection de Films-Toru Takemitsu: Vers La Mer des Sonorités (武満徹―響きの海へ) 1997(平成9)年 紙・オフセット・ポスター 東京国立近代美術館》
青を背景に、金と青で月と海を描いている。この大胆な意匠化と装飾性は、紛れもなく琳派だと思った。

 

山種美術館で絵を見た後のお約束、Cafe 椿で甘い物補給。
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《伝 俵屋宗達 槙楓図》をモチーフにした「歌ことば」をお抹茶のセットで頂きました。薄緑色のきんとんで楓の葉を、二色の寒天(錦玉羹)で楓の葉を表しています。表面に散らされた金箔でより華やかです。中は黒糖の餡でした。