縄文展@東京国立博物館 平成館
土曜日だと言うのに、東京の人気の観光スポット東京国立博物館も空いていました。なにしろこの日は殺人的な暑さでしたから。
行ってきました、縄文展。
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最初の土曜日でしたが、それほど混雑はありません。入口前のビデオを見てから入りました。
いつものように、気になったものについてメモを残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。
第1章 暮らしの美
1《微隆起線文土器 青森県六ヶ所村 表館(1)遺跡 1個 縄文時代(草創期)・前11000~前7000年 青森県立郷土館》
底が尖った筒状の土器で口に向かってわずかに広がる。口縁部が小さく波打ち、胴に隆起した線で横筋が幾重にも入っている。
2《◎壺形土器 鹿児島県霧島市 上野原遺跡 2個 縄文時代(早期)・前7000~前4000年 鹿児島県立埋蔵文化財センター》
胴部は丸みを帯びているが、首から口にかけて四角く整形されている。首と口縁だけ渦模様が入る。時代的には縄文早期であるが、まるで弥生式土器のような実用性重視な素朴な作りの壺。南九州において縄文早期から成熟した文化があったと考えられている。
4《◎漆塗彩文鉢形土器 山形県高畠町 押出遺跡 2個 縄文時代(前期)・前4000~前3000年 文化庁(山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館保管)》
漆が塗られた広口の土器。口縁部に規則的に穴があり、胴部にも渦模様が描かれている。日本の漆の活用がこんなに古い時代まで遡るとは思わなかったので、数千年もの時代を経ているように見えない。
6《漆塗注口土器 北海道八雲町 野田生1遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道・八雲町教育委員会》
漆で赤く塗られた注ぎ口のある土器。表面に七宝に似た模様がある。紐通しやガイドがあり、実用性も装飾性も備えている。
8《◎木製編籠 縄文ポシェット 青森県青森市 三内丸山遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 青森県教育委員会(縄文時遊館保管)》
縄文時代の遺跡から出土した編組製品で立体的な形が分かる全国唯一のもの。ヒノキ科の樹皮で作られている。発見時、中にクルミが入っていた。
9《◎尖頭器 長野県南箕輪村 神子柴遺跡 5個 旧石器時代終末期~縄文時代(草創期)・前16000~前11000年 個人蔵、長野・伊那市創造館寄託》
ナイフ形石器。驚くほど薄く作られている。マンゴーの種のような形。
16《◎土製耳飾 東京都調布市 下布田遺跡 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京・江戸東京たてもの園》
多摩川中流域の遺跡から出土した、直径約10センチの極大型の土製耳飾り。
25《鹿角製腰飾 青森県つがる市木造亀ヶ岡 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 東京国立博物館》
先端がねじれた奇形の鹿角で作られた腰飾り。真ん中の渦模様の下に三角模様の三叉文が刻まれている。三叉文は縄文時代を代表する模様のひとつで雄を意味する。
第2章 美のうねり
29《深鉢形土器 山梨県甲州市 安道寺遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨県立考古博物館》
口縁の大きな把手や表面に渦巻や円形文が表されている。火焔型土器が炎を思わせるのに対して、こちらは水煙に見立てられて水煙文土器と呼ばれる。
31《◎深鉢形土器 群馬県渋川市 道訓前遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 群馬・渋川市教育委員会》
口縁には大きな環状突起、底部を覗く部分全体を埋めるように流文(渦模様)が刻まれている。
これを見て、琳派の流水模様が日本人にとって根源的なものなんだと思った。
32《深鉢形土器 茨城県龍ケ崎市羽原町 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 茨城・文殊院(茨城県立歴史館寄託)》
隆線文や角押文で、皮細工のような模様。雲母入りの粘土を使っているため、光に透かすと表面が部分的に光る。
36《◎注口土器 茨城県稲敷市 椎塚貝塚 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 兵庫・辰馬考古資料館》
縄文土器の重要文化財指定第一号。持手一体型で注ぎ口がある土瓶のような形をした土器。
今の土瓶と変わらない形であることに驚いた。線刻の模様も緻密。
39《◎壺形土器 青森県十和田市滝沢川原 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 文化庁》
首と胴との接合部分に浮彫りで雲形文、胴部には磨消縄文で雲形文が描がかれている。部分的に朱色が残る。
第3章 美の競演
40《◎焼町土器 群馬県渋川市 道訓前遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 群馬・渋川市教育委員会》
口縁には大きな環状突起、胴部全面に隆線文や刻線があり、両腕を高く上げている人、両腕を開く人を象った模様がある。
42《彩陶鉢 中国、甘粛省あるいは青海省 1個 新石器時代(後期) 馬家窯文化・前3100~前2800年頃 東京国立博物館》
赤みのある土でできた鉢で、内側に三尾の魚と流文が黒い顔料で描かれている。中国西北の内陸部、黄河最上流部の甘肅省や青海省に存在した新石器時代後期の文化、馬家窯文化期の作例。
48《彩文壺 パキスタン、彩文壺 パキスタン、バローチスターン地方 1個 インダス文明期・前2200~前2000年頃 東京・古代オリエント博物館》
鹿やガゼルに似た動物の行列、豹のようなネコ科の動物が樹や太陽と共に描かれている。
65《磨研鉢 エジプト、上エジプト 1個 初期王朝時代・前3000~前2686年頃 個人蔵》
エジプトでは都市化が進み、職人によって土器が大量に作られるようになった。実用性重視で装飾性のない素朴な鉢。内側が磨研されている。
第4章 縄文美の最たるもの
79《◉火焰型土器 新潟県十日町市 笹山遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市(十日町市博物館保管)》
炎を象ったと思われる造形が見事。口縁部には鶏頭冠突起と鋸歯状突起があり、縄文は一切なく、隆線によって渦文やS字文等が描かれている。
火炎の表現が実に見事です。これは見飽きません。
81《◉土偶 縄文の女神 山形県舟形町 西ノ前遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山形県(山形県立博物館保管)》
高さのある女性を象った大型の土偶。
洗練された造形が現代的。
83《◉土偶 合掌土偶 青森県八戸市 風張1遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 青森・八戸市(八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館保管)》
膝をわずかに開いて両膝を立てた体育座りの土偶で、膝の上で両手を組んだ祈りの形をしている。
84《◉土偶 中空土偶 北海道函館市 著保内野遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道・函館市(函館市縄文文化交流センター保管)》
肩が張り出した立ち姿の土偶で自立しない。両腕が失われている。中が空洞に作られていることから中空土偶と呼ばれている。
第5章 祈りの美、祈りの形
85《土偶 滋賀県東近江市 相谷熊原遺跡 1個 縄文時代(草創期)・前11000~前7000年 滋賀県教育委員会》
原始的な土偶のひとつ。三センチ程度の小型の土偶で女の胴体部分を象ったもの。
91《三角形土偶 新潟県十日町市 野首遺跡 3個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市博物館》
三角形の小型な土偶。ほぼ土板。
97《◎ポーズ土偶 山梨県南アルプス市 鋳物師屋遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・南アルプス市教育委員会》
釣り上がった目に丸い口。円錐形の体で左手を脇に、右手を臀部に回すポーズを取る女型。
100《◎しゃがむ土偶 福島県福島市 上岡遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 福島市教育委員会(宮畑遺跡史跡公園保管)》
膝を立てて座り、右肩のストレッチでもしているかのようなポーズを取る。合掌土偶とともに祈りの形ではないかといわれている。
103《筒形土偶 神奈川県横浜市 稲荷山貝塚 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 個人蔵》
筒型の胴体にハート型の顔面がついている。手足がなくコケシのような形。
岡本太郎の太陽の塔を連想させる。
105《ハート形土偶 群馬県東吾妻町郷原 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 個人蔵》
ハート型の頭部で大きな鼻が目立つ土偶。体は線刻で埋め尽くされている。
108《山形土偶 千葉県佐倉市 江原台遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 東京・明治大学博物館》
三角の頭部をした土偶。
オカッパのように髪を両側に垂らした形に見える。両腕を体の脇に垂らし、手首を折って掌を下に向けているポーズがかわいらしい。
113《◎みみずく土偶 埼玉県桶川市 後谷遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 埼玉・桶川市教育委員会》
ハート型の顔面に大きな目と口。髪には櫛が刺さり、耳には大きな耳飾りがついている。胴部にも細かな模様が入り、全身に朱色が残っている。
154《◎人形装飾付有孔鍔付土器 山梨県南アルプス市 鋳物師屋遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・南アルプス市教育委員会》
筒型の器で、胴部に現代のキャラクターと言われても通用しそうなかわいらしい人形が施されている。
164《土偶装飾付深鉢形土器 神奈川県相模原市 大日野原遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 個人蔵、神奈川・相模原市立博物館寄託》
土器の口縁部に胸に両手を当てるポーズを取った土偶が取りついている。その両脇の口縁に環状突起、土偶の対面の頸部に取手がある。
172《顔面把手付深鉢形土器 山梨県北杜市 津金御所前遺跡 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山梨・北杜市教育委員会》
出産を象ったと思われる造形が印象的な土器。口縁に顔面が付き、その対面の胴部に新生児の頭部を思わせる顔がある。
174《◎手形・足形付土製品 北海道函館市 豊原4遺跡 5個 縄文時代(早期)・前7000~前4000年 北海道・函館市(函館市縄文文化交流センター保管)》
幼児の足形・手形の圧痕がある土製品。
182《◎猪形土製品 青森県弘前市 十腰内2遺跡 1個 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 青森・弘前市立博物館》
イノシシの形をした造形が見事。耳や尾、背中の毛を立て、威嚇している様子がよく伝わってくる。
183《猪形土製品 北海道函館市 日ノ浜遺跡 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 北海道・市立函館博物館》
こちらはウリボウ。三角形の体に横筋が入っている。北海道にイノシシは生息していないが、北海道各地からイノシシの骨や骨牙製の加工品などが出土していることから本州との交易があったのではと考えられている。
192《◎動物形土製品 北海道千歳市 美々4遺跡 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 北海道・千歳市教育委員会》
海獣か鳥か判断が難しいユーモラスな形をしている。
第6章 新たにつむがれる美
199《深鉢形土器 長野県伊那市宮ノ前 1個 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 東京国立博物館》
曽利式土器。口縁部に二つ一組の突起が四方向にある。器面全体を縦横に分割し、その内側を抽象文で飾る大形の深鉢形土器。
205《遮光器土偶 青森県外ヶ浜町 宇鉄遺跡 1個 縄文時代(晩期)・前1000~前400年 栃木・濱田庄司記念益子参考館》
カネゴンとピグモンが合わさったようなユーモラスな顔に、まさに昭和の特撮のキグルミのような臀部が印象に残りました。
最後の部屋に撮影コーナーがありました。岡本太郎が美を見出した縄文土器が並んでいます。
11時頃に入りましたが、混雑はほとんどありませんでした。休憩なしで一周2時間半といったところ。グッズはあざといと思えるほど充実していましたし、インスタレーションも大変手の込んだもので感心しました。この夏休みは、縄文展と昆虫展でいつも以上に上野が混雑しそうですね。
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