中国書画精華―日本人のまなざし―(前期)@東京国立博物館 東洋館

毎度おなじみ東京国立博物館ですが、本日は東洋館で開催中の「中国書画精華」展へ。
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東洋館 8室 中国書画精華―日本人のまなざし― 

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朝一番に来たので、貸し切り状態でした。

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 今年も、秋の中国美術の名品展として「中国書画精華」を開催します。日本には古くから中国の書画が舶載され、それらは日本美術にも大きな影響を与えてきました。特に、宋・元時代の書画は、鎌倉時代以降の禅宗と共に数多く伝えられ、書院や茶室において、日本の趣味にもとづく新たな鑑賞法のもとに親しまれてきました。また、狩野派を始めとする江戸時代の画家たちは、室町将軍家の価値観を継承しつつ、明・清時代絵画の図様・画法も積極的に学習していきました。そして明治時代以降、日中の往来が盛んになるにつれ、中国伝世の精品が少なからず日本に伝えられ、中国本来の文人趣味を理想とする財界人・文化人によって優れたコレクションが形成されました。中国歴代書画の名品がいつごろ日本に伝えられ、どのような影響を与えてきたのか、日本における受容に留意しつつ、名品の数々を紹介します。

以下、気になったものについてメモを残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

 《白衣観音図軸 1幅 平石如砥賛 中国 元時代・14世紀》
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宝冠の一部と唇に僅かに朱が入る白描の名品。平石如砥は寧波の保聖寺、天童寺などに住した禅僧で日本人の弟子もいたという。

《馬郎婦図軸 1幅 伝胡直夫筆、浙翁如琰賛 中国 南宋時代・12~13世紀》
手にした経典を熱心に見つめる美女を優美な線で描いたもの。「道有」印のある足利義満旧蔵品。馬郎婦とは馬氏の息子の妻の意。唐代に現れた観音の化身で、信心深い馬郎という人物の妻になった美女を描いたもの。狩野栄信の模本が伝わる。

《◎維摩図軸 1幅 中国 元時代・14世紀 京都・東福寺蔵》
維摩居士は釈迦在家の弟子。病床に文殊菩薩が現れ、大乗仏教の真髄を説く問答を行う場面を描いた白描画。病に侵された体を起こし、言葉を発す維摩の姿は、中国士大夫の目指す姿として讃えられた。士大夫に愛さ得れた画法、白描画の伝統を示す名品。

◎二祖調心図軸 2幅 伝石恪筆 中国 南宋時代・13世紀

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石恪は五代後蜀の画家。画家の名人である張南本に師事して水墨人物画をよくした。石恪の面貌は細緻、衣紋は粗筆という飄逸な画風は逸品といわれ、その後の中国の水墨人物画の基本となった。この二祖調心図は石恪の水墨画風を最もよく彷彿させる作品。中国禅宗の二祖慧可というよりも豊干、布袋などの散聖を描いたものともいわれる。
左幅の豊干は、天台山の国清寺に住み、髪は総髪にして眉を整え毛皮を付けた衣を着て、仏道の教理を問われると、いつも「随時」と答えたという。寒山拾得に好かれた。
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豊干の肘を支えたまま寝ている虎の顔がよい。

《◯寒山拾得図軸 2幅 伝因陀羅筆、慈覚賛 中国 元時代・14世紀》

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因陀羅は元代の画僧で、渇いた筆をこすりつけた頭髪表現と、抽象的で癖のある筆線が特徴。その作品の多くは日本に現存する。右幅は奇妙な笑みを浮かべて芭蕉の葉に書付する寒山と、巻物を手にする拾得を描いたもの。

《◯羅漢像軸 1幅 伝禅月筆 中国 元時代・14世紀》

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禅月大師貫休は唐末五代初の高僧。入蜀の後に蜀主王建より禅月大師の称号を賜った。禅月大師は、応夢羅漢図をよく描いたことで知られる。宋代以降、多くの禅月様といわれる羅漢図が描かれた。本図は水墨による禅月様羅漢図の代表作例の一つである。浅野家旧蔵品。

《◎十六羅漢図軸 1幅 蔡山筆 中国 元時代・14世紀》
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伝承を持つ羅漢図が数点現存する蔡山は、宗教画専門の元代の職業画家を考えられている。痩せこけた顔や手足の表現には迫真性があり、墨色の濃淡の多様な変化にようって、一種の不気味さをたたえている。

《◎雪汀遊禽図軸 1幅 羅稚川筆 中国 元時代・14世紀》

f:id:Melonpankuma:20171030082123j:plain羅稚川は臨川(江西省)の人。なだらかな水景にのぞむ枯木と、そこに飛び交う烏を描く。雪笹のもとには水鳥が羽を休め、わずかに掃かれた薄墨が冬の冷気を現す。

《山水図軸 2幅 伝閻次平筆 中国 元時代・14世紀》
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右幅の秋景は旅と漁楽の風景で、前景の樹の葉がわずかに色づいている。左幅の冬景は舟に乗る文士が友人を訪ねる場面で、それを迎える高士と童子が描かれている。蟹の爪のような尖った枝の枯木と、雲のように膨らむ岩石は、北栄時代の宮廷画家、郭煕の伝統を継承している。

《◎山水図軸 1幅 李在筆 中国 明時代・15世紀》

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李在は莆田(福建省)の人。明の宣徳年間に画院画家となり、山水、人物画をよくした。浙派を代表する画家でもあり、入明した雪舟が師法した画家としても知られる。本図は、中央に主峰をおいて天子の徳を表現する、北宋の李成・郭煕派的な画風を倣った李在山水画の代表作である。

《◎五龍図巻 1巻 伝陳容筆 中国 南宋時代・13世紀》
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陳容は南宋末の文人画家。長楽(福建省)の人で所翁と号した。一説に所斎とも号したという。端平2年(1235)の進士。水墨の龍を得意とし宝祐年間に名を馳せた。本図は巻末に「所斎」印があり、陳容の作といわれる。
先月、東京都美術館で開催されたボストン美術館展で《九龍図巻》を観たばかり。本図は5頭の龍が絡み合うように描かれている。さらに左に進むと、勢い良く岩間から落ちる滝が描かれている。

《 葡萄垂架図軸 1幅 伝任仁発筆 中国 元時代・14世紀》
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本図は水墨の草虫図として極めて良質の作品。元時代の任仁発筆の伝称は根拠に乏しいものの、江南の草虫図の名手の作と思われる。本来は他にいろいろな花卉草虫を描いた画巻であった可能性もある。能阿弥と狩野探幽の外題が付属する、曼殊院旧蔵品。

《雪中花鳥図軸 1幅 伝王李本筆 中国 南宋~元時代・13世紀》
f:id:Melonpankuma:20171030082128j:plain本図は厳寒の水辺の小景を描いた宋元時代の団扇画。狩野栄信(伊川院)は『君台観左右帳記』に記される元の王季本筆と極めているが、落款もなく明らかではない。徳川秀忠に仕えた松平正信の箱書きがある、川崎家旧蔵品。

《榴花小禽図軸 1幅 伝林椿筆 中国 南宋~元時代・13~14世紀》
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本図は落款がなく筆者不明ですが、南栄宮廷の画風をよく伝えている。本来は冊頁仕立てで、冊頁には「林椿 榴花山鳥」の外題と清時代の著名な収集家である安岐の鑑蔵印があった。林椿は南栄宮廷の画院画家で花鳥画にすぐれたと伝えられている。

《林檎図軸 1幅 伝李迪筆 中国 元~明時代・14~15世紀 個人蔵》
鮮やかな色彩で一枝の林檎を描いたもの。狩野常信によって南栄の宮廷画家、李迪の筆と鑑定されたが、実際にはその時代の画風を模した、後世の作品であろう。狩野派の画家による模本が複数残っている。

《秋塘郭索図軸 1幅 伝陳珩筆 中国 南宋~元時代・13~14世紀》
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本図は団扇に巧みに蟹(塘郭)と蓮を描いた宋元時代の佳品。本来は冊頁仕立てで、冊頁には「陳珩 秋塘郭索」の外題があった。蟹は甲に通じるところから本図には科挙の首席合格(一甲)の意味があったとされる。陳珩は南栄のぶん人。龍水、花卉虫魚を得意にした。 

《◉古文尚書巻第六 1巻 中国 唐時代・7世紀》
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隷古の旧体で書かれた『尚書』の残篇。料紙七紙分を存し、本文は墨界中に一紙あたり二十一行、注は双行で書写されている。紙質や書風から初唐の書写と考えられている。東洋文庫本および宮内庁本の『古文尚書』と、もと一具の唐代の鈔本で、いずれも紙背には鎌倉時代の高辻長成の著になる故実書『元秘抄』が書写されている。現行本『尚書』の謬を正す点が多く、平安時代の尚書研究の内容を知ることができる。附には、羅振玉・内藤湖南の跋を一巻に収めている。

 

朝一番で行ったおかげで、人っ子一人いない静かな時間を堪能しました。楽しかった。