大英自然史博物館展@国立科学博物館

連休初日は上野の国立科学博物館の大英自然史博物館展へ。
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宣伝はたくさん見かけるけど、そんなに混んでいないだろうと高を括っていたら、開場30分前にはこの有様。連休で子供連れも多そうなイベントは舐めちゃいけませんね。

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treasures2017.jp

会場内はモニタに映し出されているビデオ以外は写真撮影可の大盤振る舞いだったのですが、照明は最低限に抑えられているので、ブレた写真が量産されました。お見苦しい写真ばかりですが、雰囲気だけ感じてください。

序章 自然界の至宝

入場してすぐ、大英自然史博物館のエントランスホールをイメージした部屋になっています。

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4《呪われたアメジスト》
1943年、大英自然史博物館の鉱物学部宛に預けられたアメジスト。所有者に悲劇をもたらし、運河に投げ捨ててもまた自分のもとに戻ってきてしまうと言われたもの。今のところ日本でもおとなしく展示されている模様。

5《「ダドリーイナゴ」と呼ばれたブローチ》
三葉虫のブローチ。ダドリーは石灰岩採掘場の名前で、カリメネ・ブルーメンバキ(Calymene blumenbachi)という三葉虫の化石が大量に発掘されたが、それがあまりに多いので、ダドリーの虫、ダドリーのイナゴと呼ばれるようになり、その街の紋章にまでなった。

12《ブラシュカ(父子)によるガラス模型》
タコのガラス模型。実物標本は経年変化が避けられないことから、その生物の色や生息時の状態を残すために、ガラス製の生物模型が作られた。彼が92才で亡くなるまでに集めた8万点もの厖大なコレクションは政府によって買い取られ、それは大英博物館収蔵品の基礎をなし、後に大英自然史博物館に引き継がれた。

1章 大英自然史博物館の設立

1.1 ハンス・スローン 大英博物館の礎

ハンス・スローン(Sir Hans Sloane)は17世紀後半から18世紀にかけロンドンで上流階級を対象とした医者であり博物学者。カカオドリンクに牛乳が合うことを発見したことでも知られる。バッキンガム宮殿の南、チェルシー地区にあるスローン・スクエア駅はもちろん彼の名前に由来する。

14《赤褐色のボウル》
赤褐色でお猪口サイズのボウル。カーネリアン(紅玉髄)で出来ている。

15《サファイアのターバン用ボタン》
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中心に31.5カラットのサファイアが入ったボタン。旧式のローズカットで仕上げられ、色合いがもっとも映えるよう角度が調整されている。豪華に切り分けられた鉱物のベースにエメラルドとルビーが飾りつけられている。

1.2 理性時代の科学ー1650-1800年

23《オオフクチョウ Greater Bird-of-paradise Paradisaea apoda
極楽鳥とも呼ばれる。キャプションに「『無足の浮遊鳥』の神話」とあって、何のことやらと思った。当時、現地の島民にとってオオフクチョウの足は薬になると考えられていたことから切り落とされていて、最初にヨーロッパに渡った剥製に脚がなかったことに由来する。学名の apoda とは「無足」の意味。

1.3 リチャード・オーウェンと大英自然史博物館の創建

リチャード・オーウェン(Sir Richard Owen)は19世紀を代表する生物学者、比較解剖学者。恐竜の概念を生んだことで知られる。大英博物館の初代館長。

33《プリニウスの「博物誌」》
印刷された最古の本の一冊。ローマの大プリニウスが著した書。全37巻。地理学、天文学、動植物や鉱物などあらゆる知識に関して記述している。
ヤマザキマリととり・みき合作プリニウスでおなじみのものです。

www.shinchosha.co.jp

35《ガラスケースのハチドリ》
大型の六角形のガラスケースの中にハチドリ7種35羽の標本が飾られている。

36《古代エジプトのネコのミイラ》
大英自然史博物館は250体以上の動物のミイラのコレクションがある。このネコのミイラは、エジプトの女神バヌテトへの生け贄だったと考えられている。

2章 自然史博物館を貫く精神

2.1 カール・リンネと自然界を分類する方法

38《サーミ人の格好をしたカール・リンネ マーティン・ホフマンによる肖像画に基づくH・キングスバリによる版画》
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はるか昔のことですが、学生時代の勉強では生物が一番好きでリンネを神とあがめていました。そんな憧れの人の、しかもコスプレ姿をここで拝めるなんて何だか感慨深い。サーミ人は、スカンジナビア半島北部ラップランドの先住民族。美しい手工芸品を作ります。昨年行った北方民族博物館ではサミ族として紹介されていました。

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39《カール・リンネ「植物の種」》
リンネの命名法の集大成で、二名法ではじめて名付けられた5940種を掲載した。

40《カール・リンネ「自然の体系》第10版 第1巻》
二名法を植物以外にも適用し、全生物種に対する分類と命名を目指したもの。

2.2 比較解剖学の父 リチャード・オーウェン

45《モア全身骨格》
リチャード・オーウェンはニュージーランドから送られてきた一つの骨を、ヒトやカンガルーの、ゾウガメを含む14種の骨と慎重に比較することによって、巨大な飛べない絶滅鳥のものであると正確に予言した。

2.3 地球の歴史を解き明かす

52《ウィリアム・スミスの胸像 マシュー・ノーブルによる》
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ウィリアム・スミス(William Smith)は土木技師、地質学者。今ではイギリス本土の地質図を初めて作ったことで知られる。下級階級出身だったため、なかなかその業績が認められなかったという。

53《ウィリアム・スミス「ウィルトシャーの地質図」》
地図を地層で色分けするという発想自体が当時画期的だった。

59《メアリー・アニングの肖像画 グレイによる》
61《メアリー・アニングが発見した魚竜》
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メアリー・アニングは、化石を発見し、販売することで生計を立てていた。19世紀の化石ハンター。イギリスで最初の首長竜、最初の完全な翼竜、そして最初の魚竜を発見した。肖像画には愛犬トレイが描かれていたが、いかにもイギリスらしくスパニエル種。

2.4 チャールズ・ダーウィンの進化論

71《アルダブラゾウガメ》
72《ダーウィンのペットだった若いガラパゴスゾウガメ》
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74《キサントパンスズメガの1種》《スイセイラン》
ダーウィンは、管状の極端な形をしているマダガスカル固有のスイセイランの花を受粉させるには、それに応じた形態をした生き物がいるに違いないと予測していた。この蛾の発見は、彼の理論を証明する手助けとなった。

82《ウォレスの集めた昆虫》

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ウォレス(Alfred R. Wallace)は博物学者で南米やマレー諸島を実地探査した。インドネシアの動物の分布を二つの異なった地域に分ける分布境界線、ウォレス線を特定した。ウォレスの南米探検の同行者ヘンリー・ベイツの日誌も展示されている。

86《始祖鳥》
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言うまでもなく、本展覧会の目玉。部分的には恐竜で、部分的に鳥類という始祖鳥は、進化論の議論の中心的な存在になった。

3章 探検がもたらした至宝

3.1 太平洋を越えて

92《ハマゴウ属の植物のスケッチ シドニー・パーキンソンによる》
93《ハマゴウ属の植物の水彩画 フレドリック・ノッダーによる》
94《ハマゴウ属の銅板プレート》
95《ハマゴウ属の白黒校正刷》
96《ハマゴウ属の植物のカラープリント》
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これらの元になったハマゴウ属の植物・現地名プリリも展示されている。これは自然史の父と呼ばれるジョセフ・バンクスがジェームズ・クックの第一回航海(エンデバー号)に同行し、ニュージーランドから持ち帰ったもの。こういった標本を元に作られた絵は、バックス死後「バンクス花譜集」としてまとめられて、大英自然史博物館から100部のみ製作された。

3.2 深海への探索

97《チャレンジャー号の航海で採集された微生物のスライドボックス》
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チャレンジャー号は、1872年にイギリスを出航し、太平洋、大西洋、インド洋、南極海で生物採集、海底探査、海洋観測を行ったのち1876年に帰港。近代海洋学を創始した世界周航の大探検となった。日本にも寄っている。
和暦で明治5年の出港です。そんな時代に微生物まで採集していたんだと思うと、この時代の研究レベルは日本とヨーロッパでは相当な差があったことを感じずにはいられません。
今、東博の15室で博物図譜の展示をしています。チャレンジャー号の活躍した時期、日本では《薏苡仁図解 飢饉予備 山田清慶・服部雪斎他筆 明治5~18年(1872~85)》や《農作物・果樹類図(朱欒・ブンタン)山田清慶筆 明治16年(1883)》が作られていたということになります。東博の展示も合わせて観に行くと、面白いでしょう。

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3.3 南極探検 氷点下の科学

1910年テラ・ノバ遠征で、ノルウェー隊に先をこされたが、スコットは南極点に到達。しかし帰路で遭難し全員が死亡した。「もし我々が生きて帰れたならば、私は仲間の不屈の精神、忍耐力、そして勇気について語り、全イギリス人の心を興奮させたことだろう。これらの手記と私たちの遺骸が全てを語ってくれるに違いない…」とスコットは日記に残した。

103《南極産の炭化木化石》
大陸大移動の証拠であるとともに、南極がかつては緑で覆われていたことを物語る。

107《微化石のクリスマスカード》

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微化石で A.E.XMAS 1912 と描いてある。アーサー・アーランドが同僚エドワード・アレンに向け、微化石で作ったクリスマスの挨拶。二人は大英自然史博物館の微古生物学者で、有孔虫という微小単細胞生物の分析に貢献した。

3.5 日本への探検

119《ソコクロダラ》
チャレンジャー号は横浜、横須賀、神戸に寄港。ソコクロダラを江ノ島沖の水深約600mで採集した。

130《輝安鉱》
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愛媛県西条市の市之川鉱山(現在は閉山)から産出した巨大なアンチモン鉱。

4章 私たちの周りの多様な世界

132《ゾウムシ》
体長5ミリ程度の甲虫。

133《ソウムシ(Baris cuprirostris)のイラストレーション マーク・ラッセルによる》
これは科博がリクエストしたもので、自然を観察するのは科学者だけではなく芸術家も同様で、自然史の標本に科学的真理な見つけるのも、芸術的なインスピレーションを受け取るのも人間だということです。この2つは現代にいたるまで分かちがたく受け継がれており、リンネの時代から続く伝統に載ったものである。

137《プラチナコガネ》
自分を水滴のように見せることで、鳥や爬虫類などの外敵から身を守る。あまりにメタリックで、てっきりアクセサリかと思ったら本物でした。

145《オオナマケモノ》
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12000年前に絶滅したオオナマケモノ。再現3D映像では地面に穴を掘っていた。

153《ドードーの模型》
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ドードーはマダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類。ポルトガル語で「のろま」の意味。人が入植して食用にされ50年で絶滅した。完全な標本は実は1つも存在せず、実際の姿は謎のままです。この模型も、現存する骨などを元に研究者が作ったもの。再現3D映像が流れていたが、特別愛らしくコミカルになっていたように思う。

5章 これからの自然史博物館

5.1 地面の中の宝物

168《ジャダライト》
スーパーマンの唯一の弱点とされている架空の鉱物「クリプトナイト」に近い組成を持つ。クリプトナイトはフッ素を含むナトリウムリチウムホウケイ酸塩水酸化物だが、ジャダライトはフッ素を含まない。

169《ペイン石》
ペイン石は世界で最も珍しい宝石鉱物のひとつ。

5.2 未来の至宝

174-1~10《モルフォチョウ》
北アメリカ南部から南アメリカに生息。体にくらべて非常に大きな翅をもち、さらに翅の表側に金属光沢をもつのが特徴。翅の表面にある櫛形の鱗粉で光の干渉が起きるため、光沢のある青みが現れる。大英自然史博物館では、翅の構造色の研究のため飼育されている。

179《ネアンデルタール人のゲノム》
マイクロチューブに入った粉体。我々に最も近縁なネアンデルタール人のゲノム分析は、我々と99%一致することを明らかにした。我々は彼らと分岐した後、脳機能や神経システム、そして言語に関連した遺伝子がわずかに変化したことがわかった。

 展覧会の最後にはグッズ販売所が設けてありました。ここが実に危ないところで、ピンバッジやキーチェーンなど素敵なアイテムがたくさんあって財布の紐がゆるみっぱなし。博物館は動物がからむからか、美術館よりもショップの誘引力がありますね。ホント危険です。
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ガチャかぶりまくり。 

ランチは科博のレストランで数量限定の特別展記念メニューでラムレッグのローストと白身魚のフリッタ。
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東博でいっぱいいっぱいなので、科博には今まで寄らずに来ましたが、常設展をちらっとだけ覗いたら、あきらかに沼でした。

牛の内臓とかライオンの内臓とか、

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ネズミの増え方とか、
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標本のディスプレイも美しいし、
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楽しく学べるところです。
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建物だって見所たくさん。
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友の会に入りそうになったけど、寸前で踏みとどまった自分を褒めてあげたいです。