河鍋暁斎 その手に描けぬものなし(前期)@サントリー美術館
この日は築地で朝ご飯。
https://isshokuta.kuruxkuma.com/2019-02-16-161255/
外堀り通り経由で六本木通りに入ってしばらく進んだ六本木二丁目付近、多分この当たりと周りを回りを見渡すと、案の定、画用紙を組み立てたかのような建物が見えました。
テンプルタウンハウスという米国大使館職員宿舎です。
以前、六本木ヒルズの展望スペースで見かけて、気になっていました。
よく通る道でも知らないことだらけです。
さて、本題。只今、東京ミッドタウン内のサントリー美術館では「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展が開催されています。
気になったものを以下にメモとして残します。
第1章 暁斎、ここにあり!
《1 枯木寒鴉図 河鍋暁斎 一幅 榮太樓總本鋪》
入り口すぐにこの二つが並べて展示されていて、かなりテンションが上りました。圧巻です。第二回内国勧業博覧会で高い評価を得た水墨と着彩の二品です。以前トークショーで山下先生が「いっそ国民運動を」と熱心に語ってらした展示会がここで実現したということでしょう。それにしてもトーハク所蔵の《花鳥図》は二週間に限った展示という渋々感。次、何が控えてるんだろう。
第2章 狩野派絵師として
《27 枇杷猿、瀧白猿 河鍋暁斎 二幅 イスラエル・ゴールドマン・コレクション》
こちらは「これぞ暁斎」展以来。暁斎日記から推測するに、左の猿が白衣観音の見立てなんだとか。言われてみれば、右幅の猿が観音様に枇杷を捧げているように見えてくる。
《29 風神雷神図 河鍋暁斎 二幅 河鍋暁斎記念美術館》
雷公の太鼓釣りは大津絵で知られる画題。左幅の風神が雷神のポーズをしている。
第3章 古画に学ぶ
《32 鍾呂伝道図 河鍋暁斎 一幅 河鍋暁斎記念美術館》
暁斎の学習の一端をみる展示。《33○鍾離権・呂洞賓問答図 伝 顔輝》を忠実に写したもの。
《40 暁斎手控帖 河鍋暁斎 一帖 河鍋暁斎記念美術館》
左下が黒ずみ擦り切れている。常に持ち歩き見返した愛用品。
《49 鳥獣戯画 動物行列 河鍋暁斎 一面 河鍋暁斎記念美術館》
烏帽子を被った梟の先導で、頭蓋骨を被った狐に乗った狸。まわりには蛙たちが従う。
《50 蛙の蛇退治 河鍋暁斎 一面 大英博物館(ウィリアム・アンダーソン旧蔵)》
地面に突き立てた二本の棒に蛇の長い体を渡して括り付け、その体や周りで軽業を披露する蛙たちを描いたもの。あまりの蛙のやり口に蛇が哀れに見えてくる始末。
《63 文昌星之図 河鍋暁斎 一幅 河鍋暁斎記念美術館(アルフレッド・イースト旧蔵)》
文昌星は北斗七星のすぐそばにある星で、おおぐま座でいうと首から前脚の部分の6星をいう。中国科挙の守り神である魁星と間違えられて伝えられ、日本では文学の神となったため、右手に筆、左手に斗を持つ。虎の頭がついた腰巻きにも目が行く。
第4章 戯れを描く、戯れに描く
《69 貧乏神図 河鍋暁斎 一幅 イスラエル・ゴールドマン・コレクション》
破れ傘と渋団扇を背負った貧乏神が外にでないよう、輪の中に閉じ込められている。表装まで凝っていてパッチワークにしてあるのが可笑しい。
《70 五聖奏楽図 河鍋暁斎画、橘機郎賛 一幅 イスラエル・ゴールドマン・コレクション》
こちらも「これぞ暁斎」展以来。磔にされたキリストの手には扇子と鈴を持っているかと思えば、東西の聖人が揃って演奏している。
《75 念仏の鬼 河鍋暁斎 一幅 大英博物館》
法被を着て傘を背負い、首から赤い木魚を下げた鬼が、足元の蛙を睨んでいる。ことわざにもある「鬼の念仏」は、大津絵の大津絵の画題の一つ。この絵を張っておくと子供の夜泣きが治るという言い伝えがあった。
《76 百怪図 河鍋暁斎 二幅 大英博物館(アーサー・モリソン旧蔵)》
早稲田大学所蔵の《新富座妖怪引幕》を見るような迫力のある妖怪大集合の図。席画らしく畳の跡がついていて、道理で勢いがあるはずだと。
第5章 聖俗/美醜の境界線
《94 処刑場跡描絵羽織 河鍋暁斎 一領 京都府(京都文化博物館管理)》
羽織の裏に描いたもの。背中にはおどろおどろしい処刑場を彩色して、両袖部分に電柱や馬車、洋装の人々などの文明開化の街を墨だけで描く。こんなの碌な目に合わなそうで、誰が着るんだと思った。
第6章 珠玉の名品
《96 惺々狂斎画帖(一) 河鍋暁斎 一帖 河鍋暁斎記念美術館》
《97 惺々狂斎画帖(ニ) 河鍋暁斎 一帖 河鍋暁斎記念美術館》
《98 惺々狂斎画帖(三) 河鍋暁斎 一帖 個人蔵》
大伝馬町にある小間物問屋勝田五兵衛の注文で描いた画帖。化け猫とか「暁斎・暁翠伝」展でも観た鏡ヶ池伝説とか。
第7章 暁斎をめぐるネットワーク
《101 書画会図 河鍋暁斎 一幅 個人蔵》
人気絵師が一同に集まっての席画会を描いたもので、暁斎が人物と枠を描き、それぞれの絵師が枠内を描いた共作物。画中の暁斎は片手を開いて突き出し、殺到した注文を断っている。これも何度観ても楽しい。
《109 ひな祭り図 河鍋暁斎 一幅 個人蔵》
暁斎の有力なパトロンだった勝田五兵衛の愛娘、田鶴(たづ)の一周忌に追善供養のため制作された作品。葦を背景にした画中画で田鶴が遺した「遊べるも これが最後か ひなまつり」の句を元に描かれた。田鶴の追善供養に作られたものとして、本作の他に《地獄極楽めぐり図》《幾世かがみ》などがある。
《118 英国人画帖下絵 河鍋暁斎 一巻 河鍋暁斎記念美術館》
119『Cent Proverbes Japonais』の下絵。
《125 百猩々 河鍋暁翠 一幅 河鍋暁斎記念美術館》
「暁斎・暁翠伝」で《百福図》を観たが、これもなかなか福々しく、観ていて楽しくなる。
暁斎展は昨年の東京富士美術館での開催以来でした。
その前年にはBunkamura ザ・ミュージアムでもありました。
ここ数年、暁斎展が頻度よく開催されていましたが、今回のが一番充実していると思います。過去に見たものが多かったので、展示数がそこそこある割にはあまり疲れずに回れました。
サントリー美術館あるあるで、本展もごっそり展示替えされます。後期も再訪予定です。
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