平成30年 新指定 国宝・重要文化財@東京国立博物館 本館

密かにマイダーリンと呼んでいる野々宮図が展示されているので久々にトーハクへ(既に展示は終了)。
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二週間ほど限定で「平成30年 新指定 国宝・重要文化財」を展示しています。本当は連休前から何度でも足を運びたかったのですが、期間終了間際になってようやく時間が取れました。でも間に合った。

www.tnm.jp

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本展では、平成30(2018)年に新たに指定される国宝5件、重要文化財50件と、追加・統合指定された重要文化財3件の、58件を展示します(写真パネル展示8件含む)。

全室撮影禁止でしたので写真はありません。以下、気になったものについてメモを残します(◉は国宝、◎は重要文化財、◯は重要美術品)。

本館8室 平成30年 新指定 国宝・重要文化財

《◉紙本著色日月四季山水図 1双 室町時代・15世紀 大阪・天野山金剛寺蔵
四季を描いた六曲一双の屏風。右隻に金色に輝く月と桜の咲く山々、大小の金銀泊が散りばめられて表された霧。右隻左隻合わせた中央部分は荒れ狂う白波、左隻には銀色(変色して黒い)の上弦の月。雪山と浜の松、激しく落ちる滝、金雲が描かれている。
意匠化された図案と装飾性の高さにてっきり桃山時代のものかと思いました。私は、宗達あたりの江戸琳派ほど洗練されていない、やや粗野な雰囲気が残った大和絵の意匠化がたまらなく好きなので、こういうのは大好物です。離れて眺めて驚嘆のため息をつき、近くで細部を観察して唸ることの繰り返し。銀が多用されているのも気に入っています。銀が酸化する前は一際輝いていたことでしょう。大胆で豪華で素晴らしいものでした。

《◎紙本墨画淡彩野々宮図 1幅 岩佐勝以筆 江戸時代・17世紀 東京・出光美術館蔵》
マイダーリン。大好きな源氏物語をモチーフにこれまた大好きな岩佐又兵衛の淡彩墨画。岩佐又兵衛の墨の美しさは特別に感じます。同じタイミングで特別展「名作誕生」展に出ている《梓弓図》も好みですが、本図は淡彩であることで緊張感と静けさが感じられてより好きです。《梓弓図》の在原業平といい本図の源氏といい、散々待たされて女が諦めたところでぬけぬけと現れる煮え切らない男達を、よくもここまで悪気ない表情で美しく描くことよと。

《◎紙本墨画果蔬涅槃図 1幅 伊藤若冲筆 江戸時代・18世紀 京都国立博物館蔵》
数々の野菜で仏涅槃図を表したもので、錦小路の青物問屋の主人だった若冲だからこそ描ける作品。
みんな大好き若冲の作品です。本作の隣の野々宮図に貼り付いて見入っていると、通る人通る人が口々に「じゃくちゅう、じゃくちゅう」と口にするので、チュウチュウ、チュウチュウうるさいわと突っ込みたくなるくらいでした。感想になっていませんが。

《◎紙本墨画淡彩瀑布図 1幅 円山応挙筆 江戸時代・安永元年(1772) 京都・相国寺蔵》
展示スペースいっぱいに飾られ、全体を見ようとして離れると上の方が見切れてしまうほどの大きさ。応挙らしい立体感で激しく落ちる水が迫力いっぱいに描かれている。掛け軸のすぐ近くに立つと、裾が手前に垂らしてあるせいでさらに立体感が増し、押し寄せる水の勢いに圧倒されるかのように感じた。

《◎木造神王面 1面 鎌倉時代・宝治2年(1248) 宮崎・生目神社蔵》
五十センチほどもありそうな親王面。牙、額に角、目を大きく剥き、目元に皺がある。人が着けるものではなく、これ自体が神体として扱われている。

《◎薄黄縮緬地鷹衝立文様友禅染振袖 1領 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵》
淡い黄色の縮緬地に友禅染と刺繡で鷹と衝立が描かれた振袖。

《◎蔓梅擬目白蒔絵軸盆 1枚 原羊遊斎作、酒井抱一下絵 江戸時代・19世紀 東京都》
金色の縁がある長方形の黒漆の盆。対角に蔓梅擬を配し、蔓に二羽の目白が止まる。蔓梅擬の実は赤い珊瑚。酒井抱一の下絵と並べて展示してあった。

《◎交趾大亀香合 1合 明時代・17世紀 大阪・藤田美術館蔵
亀型の香合の中でひときわ大きいことから大亀と呼ばれている。色も鮮やか。幕末の番付で東の大関とされた。

《◎源氏物語 行幸 1帖 鎌倉時代・13世紀 文化庁蔵》
源氏物語の「行幸」の一帖で、藤原定家監督の下で書写されたもの。平成28年に文化庁が赤坂水戸幸から約1億3千万で購入した。

《◎平清盛請文 1幅 平安時代・12世紀 文化庁蔵》
平清盛が「大宰大弐」だった42~43歳の時の自筆文書。清盛の自筆文書で本文が完全に残っているものは珍しい。平成28年に文化庁が約1億5千万で購入した。

 

素晴らしいものを見せていただきました。平成館で開催されている特別展「名作誕生」展に劣らない名作ぞろい。次にいつ会えるかわからない名品の数々がずらりと並んでいました。特に日月四季山水図、果蔬涅槃図、瀑布図、野々宮図の並びはあまりに豪華で離れられず、行ったり来たり。今年一番興奮した展示でありました。

この後、常設展も見たかったのですが、あまりに混雑していたので断念。十分に満足したし、また次回。